ワンポイントゼミ デデキント切断 [数学基礎]
ワンポイントゼミ デデキント切断
数の集合SをA、Bの2組に分け、A組のすべての数もB組のすべての数より小さくすることができるときとき、この組み分け(A,B)をデデキント切断という。
そして、このデデキント切断による実数Rの連続性の公理。
実数の連続性の公理
Rの切断(A,B)を作るとき、Aの最大数かBの最小数かのいずれか一方だけが存在する。
デデキント切断には次の4つの分割の仕方が考えられる。
(1) A組に最大数が存在し、B組にも最小数が存在する
(2) A組に最大数が存在し、B組に最小数が存在しない
(3) A組に最大数が存在せず、B組に最小数が存在する
(4) A組に最大数が存在せず、B組にも最小数が存在しない
整数全体の集合Zは(1)の分割のタイプ。
仮に、x=n(nは整数)で整数全体の集合Zを切断するとする。
x=nがA組に属している場合
となり、A組の最大数nであり、B組の最小数はn+1になる。
x=nがB組に属している場合
となり、A組の最大数はn−1であり、B組の最小数はnになる。
いずれの場合も、A組に最大数、B組に最小数が存在する。
また、x=1/2と有理数の点でZを切断すれば、
となり、A組には最大値0、B組には最小値1が存在する。
有理数全体の集合Qに関しては、(1)以外のいずれか一方の分割のタイプになる (補足)。
例
(4)には一見最大数が存在しそうですが、√2は無理数でQの要素ではないので、(4)は次のように書き換えることができる
だから、A組に最大値は存在しない。
x=√2の近くには無数の有理数が存在する(有理数の稠密性)けれど、この場合、Aには最大数、Bには最小数は存在しない。
そして、実数全体の集合Rについては(2)、(3)のいずれか一方のタイプのデデキント切断しかない。
(4)の型のデデキント切断が存在しないというところが実数と有理数の決定的な違い。
(補足)
有理数全体の集合Q、実数全体の集合Rは、(1)のタイプのデデキント切断はあり得ない。
もし、Q(またはR)の切断で生じた、A組に最大数α、B組に最小数βがともに存在すると、α<βだから、
一方で
だから、はA組かB組のいずれかに属すはずであるが、属していない。これは(A,B)が切断であることに反する。
よって、有理数全体の集合Q、実数全体の集合Rに(1)のタイプの切断はあり得ない。
デデキント切断の例
正午、つまり、12:00ジャストは、午前に属するのか、午後に属するのか?
1日を午前と午後とに分けて
(午前、午後)
と(デデキント)切断を作ると、正午は午前(A組)の最大数になるか、正午は午後(B組)の最小数になるかのいずれか。
時間は、一般的に、実数と同様に連続的なものと考えられているから、正午は午前に属するか、午後に属するかのいずれか一方としか答えられない。
しかし、これは、「正午は午前か、午後のどちらか一方にすればいいんですよ。あなたのお好きな方を選んでくださいな」という話なのであった(^^)
デデキントの切断手法はわかるんですよ。でもこれでは、最初から実数体が連続になるように公理を定めただけじゃないのか?、と思えました。
それで自分は、デデキントの切断は最初は受け入れられませんでした。自分が知りたかったのは、有理数では連続体を作れない理由でした。
一方、コーシーによるコーシーの同値列を用いた実数の構成法は納得できました。コーシーは実数の無限小数展開において、有限の桁数しか扱えない人間の計算能力の限界を、じつに見事に理論化しモデル化したと思います。
しかし論理的にはデデキントの方法もコーシーの方法も同等です。
コーシーの方法においては、コーシーの同値列から決まる同値類を実数そのものとみなすとなりますから、「最初から実数体が連続になるように、コーシー列の同値類を決めた」と言われればその通りです。
しかしそこには、有限桁しか扱えない人間の計算能力を反省したコーシーの思いがある気がします。論理的に同等な公理系であっても、数学的には全然違う思いがそこには込められているんですよ。
という訳で、自分はデデキントよりコーシーのやり方が好きです。
by ddtddtddt (2018-03-22 19:31)
コメント、ありがとうございます。
ずっと前に、微分積分の記事を書いたとき、デデキント切断は使わずに、上界(下界)の存在、そして、上限、下限を出発点にしたんですよ。
これらはほとんど同じものですから。
わたしは、上限、下限派です。そのまますぐに、ε-δ論法を使った、関数の極限、連続に入れますから。
楽でいい(^^ゞ
by nemurineko (2018-03-22 20:37)