境界要素法入門4 [境界要素法]
境界要素法入門4
[境界要素法-2]
境界要素法の内点方程式。
Δφ=g(x,y)を満たす未知関数です。qとはφとの外法線微分値。
はδをデルタ関数として、
を満たすものなら、何でもOKでした。そこで(2)を満たすとして出来るだけ簡単なものを考えます。これは実際に計算可能になる事が多いです。例えばとして(ξ,η)を中心に等方的なものを選び、境界条件は考えないとすれば、
が容易に得られます。
http://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/archive/c2305704962-1 (a)
の[コーシーの積分公式の周辺-1]
(1)の入出力関係を整理します。は具体的に決められたので、右辺で *つきのものは全て既知関数です。領域積分項はg(x,y)も既知関数なので、具体的に計算可能です。未知なのは、境界積分項に現れるφとqだけです。そうすると境界C上のφとqさえわかれば、(1)から未知関数φ(x,y)を計算できる事になります。
解析領域Rの境界Cを折れ線近似し、折れ線の角に節点jを配置した絵を想像して下さい。jは節点番号で、左回りにCを一周します。節点jとj+1を端点として持つ線分を境界要素と呼び、それに要素番号kを与えます(左回りにCを一周)。節点jでのφとqの値は、とで表します。
境界要素kの要素長が十分に小さければ、k上の関数値:φ(c),q(c),は、(と)および(と)で線形近似でもすれば、十分なはずです。,0≦t≦1として、
一方、特異点によるとを、で表します。iは特異点の場所を識別する番号で、i=1,2,・・・で十分です。
これらを(1)の境界積分項に代入し、要素k上で考えてやれば、
となります。
上記右辺の積分において、とは既知関数なので、要素k上で具体的にの形に書けます。tは積分パラメータ(0≦t≦1)です。
従って右辺の積分は、具体的な数値とになります。に関するについての積分を,に関するについての積分をで表しました。
境界積分全体の値は、これらの集計です。節点番号jについて和をとる事になります。
ただしは、
は、
です。
ここで行列記法を思い出して下さい。i=1,2,・・・だから、
・・・ですよね(← OKですか?(^^;))。
となります。
(3)では、具体的に計算可能な既知量でした。よって(3)は、未知量とに関する連立一次方程式の形に、ほぼなっています。係数行列はとです。もし(3)を解いてとを定められれば、線形近似の形で境界上のφとqが得られた事になり、内点方程式(1)から未知関数φ(x,y)の近似解を求められます。左辺のさえ何とかなれば・・・。
は、
なのでした。でもこれは、「が積分領域Rの内点の場合には」なのでした。つまりは、Rの外にあっても(外点でも)OKです。その時は、デルタ関数の性質から、
です(^^)。そういう訳で、
によって、境界未知量を計算できる事になり、(1)を併用します。
実際には境界条件として与えられた既知量を(4)に代入し、式の数を調整します。典型的には、境界上のφの値全部かqの値全部が与えられます。理屈の上では特異点は、必要な数だけR外部の任意の位置に、自由に設定すれば良い事になります。
(4)には境界未知量しか出てきません。そこで(4)を境界方程式と呼びます。(4)の理論的形はグリーン関数法のいわば特殊解法として、昔から知られていたものでもありましたが、FEMになれた人達が気づいたのは、次の点でした。
においてとすると、は(も)線形独立な関数系を構成します。従って、i=1,2,・・・によって与えられた(4)は、独立な線形条件を成すはずだと。
またいかに連続関数であろうと、離散化して考えれば節点自由度の有限の自由度しか持たないと。だとすれば、変分は完全に任意である必要はなく、i=1,2,・・・で十分に任意化されている、と。
このような発想が手軽に出来るようになったのは、やはり関数空間以後ですが、それだけでは理論止まりだったと思われます。「要素に区切ってやっつける」計算スタイルがFEMにより具体的に普及した事が、最後の決定打になった気がします。
以上のやり方は理論的にも具体的な計算方法としても、最も明解なものです。ところが境界要素法の中で(4)は間接法と言われ、じつはマイナーなんです。というのは特異点の外部配置が余りにも自由過ぎて、数値計算の専門家達にも正確な誤差評価が無理だったからです。
自分は、実用的な数値解が得られりゃOKよ程度のユーザーなので、(4)も時々使いますが、大概は専門家達に不評な方法なら、趨勢は右にならえです。
という訳で、境界要素法の直接法という話になります。
(執筆:ddt³)
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