第49回 留数と留数定理 [複素解析]
第49回 留数と留数定理
今まで長々と話してきた複素解析は、今回お話する「留数定理のためにあると言っても過言ではない」ほど重要な定理。
留数
αを関数f(z)の孤立特異点とし、αを中心とするローラン展開を
とするとき、この整級数の–1次の係数を留数という。
これを
またはRes f(z)とあらわす。
ローラン展開の定義より
となる。ここで、Γはその周上および点αを除いた内部でf(z)が正則である閉曲線である。
①式を留数の定義に使ってもいいにゃ。
①式を見ればすぐにわかるけれど、
だと言っているんだケロよ。f(z)が孤立特異点αをグルッと取り囲む閉曲線Γの内部で正則であれば、Γに沿っての周回積分は留数に2πiを掛けたものだと言っているんだケロよ。どんな方法でもいいから留数を求めさえすれば、積分なんて面倒な計算をしなくていいってことだにゃ。スゴイと思わない。
ずっと前に
のとき、αを中心として半径r>0の円Cに沿ってf(z)を積分すると、
という話をしたにゃ。
f(z)=1/(z–α)の–1次の係数の係数は1だから留数は1だにゃ。だから、これに2πiを掛けたものが積分の値になっている。n=2,3,…のときは0だから、0になっている。
なお、この時、αが孤立特異点になっているのはわかるよな?
しかし、積分路である閉曲線Γの内部にf(z)の孤立特異点が一つでなく、複数個ある場合もあるにゃ。
ということで留数定理。
留数定理
定理(留数定理)
関数f(z)が単一閉曲線Cを境界とする領域に有限個の孤立特異点を持ち、これら以外ではCを含めて正則であるとき、
【証明】
図のように、各のまわりに互いに交わらないような円をかく。
この各について
が成立する。
また、コーシーの積分定理の系1より
が成り立つので、
となる。
(証明終わり)
では、どうやって留数を求めるか。これには幾つか方法がある。
f(z)の孤立特異点αを中心とするローラン展開を求め、その係数を求めるというのがもっともオーソドックスな方法だろうけれど、これは一般的にかなり大変。
ということで、今回はもっとも簡単な方法を紹介するにゃ。
αがf(z)が1位の極の場合、αにおけるローラン展開は
という形になっている。
だから、上の市の両辺にz–αを掛ける。そうすると、
となるので、z→αという極限をとると
となる。
では、1位の極における留数を求める簡単な問題を解いてみるにゃ。
問題 次の関数の特異点における留数を求めよ。
【解】
となるので、z=±iaは1位の極である。
よって、
となる。
ちなみに、極というのは、1/f(z)が0になる点だにゃ。第47回の系を見てほしいニャ。
コーシーの積分定理の系1
Cは領域Dの中にある閉曲線であり、はCの内部にあって、かつ互いに他の外部であるような閉曲線である。さらに、Cとで囲まれた領域およびその境界はDに含まれている。f(z)が領域Dで正則であるとき、次の等式が成り立つ。
「第47回特異点」の系
孤立特異点αがf(z)の極であるための必要十分な条件は、αが1/f(z)のn位の零点であることである。
コメント 0