第36回 整級数(べき級数) [複素解析]
第36回 整級数(べき級数)
整級数(べき級数)とは、次のような形であらわされる無限級数のことですにゃ。
を整級数の係数、αを整級数の中心という。
それで、ζ=z–αとおくと①は
の形になるので、①ではなく、原点を中心とする
で議論を進めますにゃ。
②の形の整級数で最も簡単なものは、
だにゃ。
これは34回で出てきたけれど、|z|<1ならば、
に収束する。だけれども、|z|>1では収束せずに発散してしまう。
というように、一般に整級数は、zの値によって収束するか発散するかが決まるんだにゃ。
定理5
整級数がのときに収束するならば、この級数はである任意のzで絶対収束する。
【証明】
は収束するので定理2の系より、すべてのnに対してとなるMが存在する。
よって、
となる。
なのでは収束し、定理4よりは絶対収束する。
(証明終わり)
系
がのときに絶対収束しないならば、この級数はである任意のzで発散する。
【証明】
の点ζで整級数が収束すると仮定する。
定理5よりのすべての点zでは絶対収束することになるが、「点で絶対収束しない」という条件と矛盾。
よって、
がのときに絶対収束しないならば、この級数はである任意のzで発散する。
収束半径
定理5とその系から、一般に整級数が与えられると、|z|<Rのときに整級数が絶対収束し、|z|>Rでは発散するような正の実数Rが存在する。このRを整級数の収束半径といい、複素平面上の円|z|=Rを収束円という。
ただし、z=0以外の全ての点で整級数が発散する場合にはR=0とし、すべてのzに対して収束する場合にはR=∞tとする。
この収束半径Rの求め方には、次の2つの定理が良く使われるにゃ。
定理6(Cauchy-Hadamardの公式)
整級数の収束半径Rは次の式で与えられる。
定理7
整級数に対してが存在するならば、その極限値は収束半径Rを与える。
定理6、定理7ともに、1/R=0のときはR=∞、1/R=0のときはR=0と定義することにする。
定理6でなんか変な記号が出てきたにゃ。これは上極限と呼ばれるものだケロ。よく使うのは定理7の方なので、「こんなのがある」程度で十分だにゃ(^^ゞ
実級数の場合の証明は、「数列と級数」のどこかで書いていると思うにゃ。
気が向いたら、改めて証明することにして、今は先を急ごう。
問題 次の収束半径を求めよ。
【解】
(1)だから、
よって、収束半径R=1
(2)だから、
よって、収束半径R=∞となる。
ちなみに、
なんだケロ。
指数関数をこのように定義することもできるんだにゃ。
参考
第34回 べき級数と収束半径
http://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/2015-06-30
第35回 べき級数の性質
http://nekodamashi-math.blog.so-net.ne.jp/2015-07-01
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