SSブログ
多変数関数の微分 ブログトップ
前の10件 | 次の10件

ベクトル関数とその微分 [多変数関数の微分]

ベクトル関数とその微分

 

実数Rの部分集合Dに属する点tに対して、実関数x(t)y(t)z(t)が与えられているとき、ベクトル(x(t),y(t),z(t))を考えることができ、このベクトルF(t)=(x(t),y(t),g(t))Dからへの1変数ベクトル値関数、または、ベクトル関数という。

 

Lを定ベクトル、t₀を一定の値とするとき、

  

ならば、tt₀に限りなく近づくとき、F(t)Lに限りなく近づくといい、また、LF(t)の極限といい、

  

であらわす。

イプシロン・デルタ論法で書くならば、

任意のε>0に対して、あるδ>0があって

  

が成り立つとき、

  

とあらわす。

 

また、

  

が成り立つとき、F(t)t=t₀で連続であるという。また、区間Iのすべての点でtで連続であるとき、F(t)Iで連続であるという。

イプシロン・デルタ論法による、ベクトル関数F(t)t=t₀における連続の定義は次の通り。

任意のε>0に対して、あるδ>0があって

  

が成り立つとき、F(t)t=t₀において連続であるという。

 

ベクトル関数F(t)に関して、次の極限

  

が存在するとき、F(t)t=t₀で微分可能という。また、この極限値At=t₀における微分係数といい、

  

であらわす。

 

定理

  

とすると、次が成立する。

(ⅰ) 

(ⅱ) F(t)は連続⇔x(t)y(t)z(t)は連続

(ⅲ) 

 

この定理はほとんど明らかだと思うので、(ⅰ)だけを証明することにする。

 

【略証】

(ⅰ) ならば、

  

逆に、
  
ならば

  


(証明終)

 

 

ベクトル関数の微分については、実関数の微分と同様に次の公式が成り立つ。すなわち、A=A(t)B=B(t)tのベクトル関数m=m(t)tのスカラー関数とすると、

  vec-bi-siki-002.png

である。

 

例1 Cが一定のベクトルのとき、
  

 

例2 mが定数のとき、
  

 

 

問題1 Atのベクトル関数とするとき、次のことを示せ。

(1) 
  

ここで、A²=AAとする。

(2) |A|が一定であるとき、A は直交する。

【解】

(1)

  vec-bi-siki-003.png

 

(2) |A|は一定だから、A²=AA=A²も一定。

したがって、

  

また、(1)の結果より

  

よって、A は直交する。

(解答終)

 

 

問題2 

  

【解】

  

(解答終)

 

 

問題3 A(t)の微分係数Aの方向とこれに垂直な方向とに分解せよ。

【解】

Aと同じ方向の単位ベクトルをaAの大きさをAとすると、

  vec-bis-ki-005.png

aは単位ベクトルだから問題1より、aは直交するので、

  vec-bi-siki-006.png

である。

(解答終)

 

A(t+Δt)A(t)のなす角をΔθ、単位ベクトルaの増分をΔaとすると、

  vec-bi-siki-007.png

と同じ方向の単位ベクトルをbとすると、

  

だから、問題3の(1)は

  vec-bi-siki-008.png

である。

 

 


ベクトルの内積、外積 [多変数関数の微分]

ベクトルの内積、外積

 

§1 ベクトルの内積(ベクトルのスカラー積)

 

naiseki-graph-001.pngベクトルabの大きさをab、そのなす角をθとするとき

  

abの内積といい、記号ab(a,b)などであらわす。すなわち、

  

である。

内積はスカラーで、baへの正射影をabへの正射影をとすれば、

  

である。

abがともに零ベクトルでないとき、(1)式より、内積はθが鋭角ならば正、直角ならば0、鈍角ならば負である。また、abのいずれかが零ベクトル0であるとき、内積は0である。

ベクトルの内積に関しては、交換、結合法則が成り立つ。すなわち、

  

mをスカラーとすると、さらに、

  

が成り立つ。

 

先に述べたように、ベクトルaとベクトルbのなす角θが直角のときab=0である。

逆にab=0のとき、

 (ⅰ) abのなす角θが直角

 (ⅱ) a=0またはb=0

である。

 

特に、基本ベクトルijkに対しては

  

である。

したがって、

ベクトルa、ベクトルbの成分を(a₁,a₂,a₃)(b₁,b₂,b₃)とすれば、内積ab

  

で、abのなす角の余弦は、(1)、(2)式より

  

 

問1 a=2i–3j+5kb =–2i–2j+2kが垂直であることを示せ。

【解】

  

よって、垂直である。

(解答終)

 

問2 a=2i–3j+kb=3ij–2kのなす角を求めよ。

【解】

  

(解答終)

 

問3 a=2i–3j+kb=3j–4k上への正射影を求めよ。

【解】

ab上への正射影は

  

である。

よって、

  

(解答終)

 

 

§2 ベクトルの外積(ベクトルのベクトル積)

 

gaiseki-graph-001.png平行でない2つのベクトルaを隣り合う2辺とする平行四辺形をもとに

(1) 大きさは、この平行四辺形の面積に等しい

(2) 向きは、この平行四辺形のある平面に垂直で、aからbへ右ネジをまわすときネジの進む方向と同じ

であるベクトルを作る。

このようにabから作ったベクトルをab外積、または、ベクトル積といい、記号a×bであらわす。

abのなす角をθとすると、外積の大きさは

  

である。

abが平行のとき、およびaまたはbが零ベクトルであるとき、

  

と定義する。

a×b≠0のとき、a×bb×aと大きさが等しく向きが反対だから

  

すなわち、ベクトルの外積は交換法則が成立しない。

しかし、分配法則は成り立ち、

  

さらに、

  

 

ijkを基本ベクトルとすると、

  

ベクトルaとベクトルbの成分をそれぞれ(a₁,a₂,a₃)(b₁,b₂,b₃)とすると、外積は、分配法則が成り立つので、

  

これを行列式で書くと

  

である。

 

 


曲率円(接触円)を求める [多変数関数の微分]

曲率円(接触円)を求める

 

曲線y=f(x)上の点P(x₀,f(y₀))における曲線y=f(x)の曲率円(接触円)を求める前に、復習。

 

曲率円

曲線y=f(x)上の点P(x₀,y₀)において

  

 

で定まる円

を曲率円(接触円)という。

 

問題 次の曲率円を求めよ。

(1) 放物線y=x²上の点x=0x=1における曲率円。

(2) 双曲線y=1/x上の点x=1における曲率円。

(3) 曲線y=logx上の点x=1における曲率円。

【解】

kyokuen-graph-001.png(1) y=f(x)=x²だから、f’(x)=2xf''(x)=2

x=0ではf(0)=0f'(0)=0f''(0)=2

  

したがって、曲率円は

  

である。

kyokuen-graph-002.pngx=1では、f(1)=1f'(1)=2f''(1)=2

  

よって、x=1における曲率円は

  

である。

 

(2) y=f(x)=1/xだから、
  

x=1では、f’(1)=−1f''(1)=2

  

よって、x=1における曲率円は

  

である。


y=1÷x-en-graph-001.png

 

(3) y=f(x)=logxとおくと、
  

である。

x=1では、f(1)=0f'(1)=1f''(1)=−1

   

よって、x=1における曲率円は



y=logx-en-graph-001.png

(解答終)

 

 


曲率と曲率半径 [多変数関数の微分]

曲率と曲率半径

 

曲率とは曲線や曲面の曲がり具合をあらわすもので、曲率半径は曲率の逆数である。

 

問題 半径rの任意の円の微分方程式を作れ。

【解答】

円の中心を(a,b)とすると、半径rの円の方程式は

  

①の両辺をxで微分すると、

  

②の両辺をxで微分すると

  

②と③より

  

③と④を①に代入して、a、bを消去すると

   

よって、

  

(解答終)

 

kyokuen-graph-001.pngもし、x=x₀の近傍で曲線y=f(x)を局所的に円に近似できるとすれば、⑤式からこの近似した円(曲率円)の半径(曲率半径)を

  

求めることができる。

また、②と③式より、円の中心(a,b)

  

と求められる。

 

試しに、⑥式を用いて、放物線y=x²/2の点xにおける曲率円の半径を求めてみると、

  

kyokuen-graph-002.pngだから、

  

よって、x=0のとき曲率半径r=1x=0のとき曲率半径r=2√2になる。

図を見ると、x=0、ならびに、x=1の近傍の放物線を曲率円が表していることがわかるであろう。

 

以上のことをまとめると、次のようになる。

 

曲率円

曲線y=f(x)上の点P(x₀,y₀)において

  

 

で定まる円

  

曲率円接触円)という。

 

 

さて、一般論。

 

kyokuen-graph-003.png曲線上の点P(x,y)における接線とx軸のなす角をθ、曲線上でPに近い点Qにおける接線'x軸となす角をθ+Δθとし、弧PQの長さをΔsとするとき、

  

を2点PQ間の平均曲率といい、

  

(の絶対値)を曲率、この逆数を曲率半径という。

 

半径rの円があり、円周上の2点PQとこの円の中心のなす角、すなわち中心角をΔθとすると、弧PQの長さΔs=rΔθだから、

  

となるので、何故、曲率の逆数が曲率半径になるのかが分かるのではないか。

 

  

この両辺をxで微分すると、左辺は

  

だから、

  

また、

  

だから、

  

したがって、曲率と曲率半径κ

  

である。

 

Pにおいて曲線に接し、接線に関して曲線と同じ側にあって、半径が|κ|に等しい円を曲率円といい、その中心)曲率円の中心という。

 

問 y=x³の曲率を求めよ。

【解】

  

したがって、

  kyokuritsu-siki-002.png

(解答終了)

 

 


直交曲線の追加問題の答えだケロ [多変数関数の微分]

直交曲線の追加問題の答えだケロ



問題 次の曲線群の直交截線を求めよ。

の答えだケロ。


解く前に、まずは、この曲を!!


直截曲線の微分方程式を導く大本の微分方程式は

  

で、y'を−1/y'に置き換えると

  

となる。

  

だから、これを用いて⑨式を書き換えると

  

³は③のxyを置き換えた、入れ替えたもの、つまり、③と⑨³は同形の微分方程式。そして、③の微分方程式の解はx²+y²=Cxだから、これのxyを入れ替えたもの、つまり、y²+x²=Cyは⑨³の(一般)解になるはずだケロ。
ならなければおかしいケロ!!

このことに気づけば、微分方程式

  

を解かずに、この微分方程式④の一般解x²+y²=Cyを求められるのであった。


chokkou-graph-004.png
 

なのだけれど、グラフを見るとわかる通り、y=0、つまり、x軸は曲線群x²+y²=Cxのすべての曲線に直交しているので、y=0もこの曲線群x²+y²=Cx直交截線である。

y=0のときy'=0だから、曲線(?)y=0は④式を満たしている。つまり、y=0は微分方程式④の解の一つである。でも、これは一般解x²+y²=Cyであらわすことができないので、y=0は④の特異解ということになる。

 

なお、微分方程式④は次のように解くとよい。

微分方程式④の右辺の分子分母をで割ると、

  

となるので、これは同次形と呼ばれる微分方程式。

このタイプの微分方程式は、y=txとして、

  

 




直交曲線の追加問題 [多変数関数の微分]

直交曲線の追加問題

 

今日、ブログにアップした直交曲線群(直交截線)の追加問題だケロ。

 

問題 次の曲線群の直交截線を求めよ。

  

 

①の両辺をxで微分すると、

  

①に②に代入し、Cを消去すると、

  

③のy'を−1/y'に置き換えると、

  

これが直交截線の微分方程式になる。

 

③から

  

P(x,y)でこれに直交する曲線の(接線)の傾きをdy/dxとすると、

  

と、直交截線の微分方程式を作ってもいい。

 

さて、この微分方程式④をお前らに解いてもらおうじゃないか。

一見、簡単そうに見えるけれど、真面目にこの微分方程式を解こうとすると、おそらく、地獄を見る。高校以来お馴染みの(単純な)変数分離法ではこの微分方程式は解けない!!

 


しかし、ずる賢いヤツ、あるいは、勘のいいヤツは、④を解かずにこの解をすぐに見つけ出せるのであった。

 




オマケとして、このグラフを。

chokkou-graph-004.png

目に見えるものだけが答えだとは限らないケロよ。



直交曲線群 [多変数関数の微分]

直交曲線群

 

パラメータc、1個の平面曲線群

  

のすべての曲線に一定の角度αで交わる曲線を等角直線といい、とくにα=±π/2α=±90°)のとき直交曲線という。

微分方程式

  

で与えられる曲線群に対する直交曲線群の微分方程式は

  

である。

 

chokkou-graph-000.png曲線y=φ(x)に点P(x,y)y=ψ(x)で直交するとすると、すなわち、点Pにおけるy=φ(x)y=ψ(x)の接線が直交するとすると、この曲線の接線の傾きφ'(x)ψ'(x)の積は−1

したがって、

  

(1)に代入すると、

  

ここで、改めて

  

とおくと、(1’)は(2)になるというわけ。

 

 

例題 放物線y=ax²a≠0の任意実数)に直交する曲線群の方程式を求めよ。

chokkou-graph-001.png【解】

  

xで微分すると、

  

×2−②×x

  

x≠0とすると、

  

曲線y=ax²に点P(x,y)における曲線の傾きをとすると、

xy≠0のとき、

  

したがって、

  

xy=0のとき、y=ax²x軸に接するからy=0は直交する曲線になる(特異解)。

したがって、y=0が直交曲線群である。

(解答終)

 

y=ax²を、

x≠0のとき

  

と変形し、さらに、この両辺をxで微分し

  

として、aを消去することもできる。

 

問題 次の曲線群と直交する曲線群を求めよ。

【解】

chokkou-graph-002.png(1)

  

の両辺をxで微分すると、

  

P(x,y)においてxy=kに直交する曲線の勾配をdy/dxとすると、

  

 

(2)

  

の両辺をxで微分すると、

  

y–1≠0のとき

  

P(x,y)においてxy=kに直交する曲線の勾配をdy/dxとすると、

を変数分離法で解くと、

  chokkou-siki-001.png

y=1は円群x²+y²+2x–2y+C=0に直交し、これは①のa=0の場合(特殊解)(※)。

x=−1も円群x²+y²+2x–2y+C=0に直交する(特異解)。

だから、y–1=a(x+1)aは任意定数) とx=−1

chokkou-graph-003.png

(解答終)

 

(※)

だから①のaは、a=0にはならないけれど、式の形は同じということで、y=1を①の特殊解とした。

 


第22回 包絡線 [多変数関数の微分]

第22回 包絡線

 

αをパラメータとして含む曲線群

  

の各曲線と1点だけで接する曲線を、この曲線族の包絡線という。

 

f(x,y,α)級とする。曲線群と包絡線の接点を(x,y)とすると、xyαの関数である。

これを

  

とする。

(1)と(2)は接するのだから、

  

また、φ(α)ψ(α)f(x,y,α)=0上の点だから

  

これをαで微分すると、

  

よって、包絡線は、2曲線

  

の交点(φ(α),ψ(α))=0の軌跡であり、この2式からαを消去した方程式の曲線Cに含まれる。そして、曲線Cは曲線群の特異点を含むことがある。


y^4-y^2+(x-a)^2=0-houraku-graph-001.png

  dai22-siki-009.png

この場合、x–α=0。よって、x=αのときy⁴–y²=0となりy=0±1となるが、点(α,0)は特異点(結節点)なので、直線y=0は特異点(α,0)の軌跡。したがって、包絡線はy=±1である。(右図参照)

 

 

問題1 次の曲線群の包絡線を求めよ。

  dai22-siki-001.png

【解】
(1)

  

①の両辺をαで偏微分すると

  dai22-siki-002.png

①の両辺を②乗すると、

  dai22-siki-003.png

よって、包絡線は放物線y²=4x

 

(2)

  

①の両辺をαで偏微分すると、

  

①と②を2乗して足すと

  

よって、包絡線は原点を中心とする半径pの円である。

 

(y-a)^2=x^2(x+1)-houraku-graph-001.png(3)

  

αで偏微分すると、

  

したがって、

  

x=−1は包絡線であり、x=0は特異点の軌跡。

(解答終了)


 

  

とすると、

  

したがって、(0,α)特異点である。

また、

  

よって、(x,y)=(0,α)において

  

よって、(0,α)結節点で接線は2本引ける。

 

 

問題2 次の包絡線を求めよ。

(1) 円x²+y²=r²y軸に平行な弦を直径とする円の曲線群

(2) 座標軸で切り取られる部分の長さが一定である曲線群

【解】

dai22-fig-001.png1) 弦の両端をAB、その中点をCとし、C(α,0)とする。

三角ACOは直角三角形だから、ABを弦とする円の半径AC

  

よって、円の方程式は

  

αで偏微分すると、

  

これを①に代入すると、

  dai22-siki-004.png

 

(2) 直線の方程式を

  

とすると、条件より

  

①をαで偏微分すると、

  dai22-siki-005.png

②をαで微分すると

  dai22-siki-006.png

③に代入すると、

  dai22-siki-007.png

とおくと、

  

これを①に代入すると、

  

②に代入すると、

  dai22-siki-010.png  

④を②乗したものと⑤の辺々を掛けると、

  dai22-siki-008.png

よって、アステロイドになる。

(解答終了)

 


第21回 平面曲線 [多変数関数の微分]

第21回 平面曲線

 

§1 通常点と特異点

 

関数f(x,y)級の関数とし、(x₀,y₀)を曲線f(x,y)=0上の点とする。が同時に0にならないとき(x₀,y₀)通常点正則点といい、となるとき特異点という。

(x₀,y₀)が通常点のとき、ならばx₀の近傍内にある曲線の一部はy=φ(x)ならばx=φ(x)で表される。通常点(x₀,y₀)では接線がただ1つ存在し、その方程式は

  

である。

 

例1 f(x,y)=x²+y²–a²= 0a>0)とすると
  
したがって、になるのは(x₀,y₀)=(0,0)であるが、(0,0)は曲線上の点ではないので、曲線f(x,y)=x²+y²–1= 0は特異点を持たず、通常点のみである。

また、曲線(原点を中心とする半径aの円)上の点(x₀,y₀)における接線の方程式は

  

 

例2 f(x,y)=y³–x⁴=0とすると、
  
したがって、(0,0)は特異点。

この曲線は と同一の曲線なので、

  

となり、φ'(0)=0で、この曲線はx=0x軸と接している。

y^3-x^4=0-graph-001.png

 


 

例3 f(x,y)=y²–2x²y+x⁴–x⁵= 0とすると、

  

したがって、(0,0)は特異点である。

y²–2x²y+x⁴–x⁵= 0yについて解くと、になるので、

  

したがって、x=0での微分係数は0となり、この曲線はx軸に接している。

この曲線の特異点(0,0)のような特異点を嘴点と呼ぶ

(y-x)^2=x^3-graph-001.png 



§
2 特異点の分類

 

f(x,y)級の関数とし、(x₀,y₀)を曲線f(x,y)=0の特異点とする。が同時に0にならないとき、(x₀,y₀)を2重点という。

  

とおくと、2重点は次のように分類できる。

 (1) D>0ならば結節点で、(x₀,y₀)で相異なる2本の接線が引ける

 (2) D=0ならば通常は尖点で、(x₀,y₀)における接線は1本である。

 (3) D<0ならば孤立点で、その近傍内にある曲線の部分は(x₀,y₀)だけである。

 

例2、例3の特異点は、D=0になるので、尖点である。

 

問題 曲線y²=x²(x+a)の特異点を調べよ。

【解】

f(x,y)=y²–x²(x+a)とおくと、

  を解くと、

になる。

a≠0のとき

  

したがって、特異点は(0,0)のみである。

特異点の判別をするために、f(x,y)の2次偏導関数を求めると、

  

したがって、

  

だから、

a>0のときは結節点、

a=0のときは尖点、

a<0のときは孤立点

(解答終了)

 

参考までに、a=3a=−3のときの、曲線y²=x²(x+a)の概形を以下に示す。

y^2=x^2(x+3)-graph-03.png 

 y^2=x^3-graph-png.png

y^2=x^2(x-3)-graph.png 

 


ラグランジュの未定乗数法を使って大学入試の有名問題を解く [多変数関数の微分]

大学入試の問題で非常に有名な問題がある。

 

問題 正の実数abca+b+c=1を満たすとき、次の問に答えよ。

(1) abcの最大値を求めよ。

(2) であることを示せ。

(3) の最小値を求めよ。

【解】

(1) 相乗平均≦相加平均より

  

よって、a=b=c=1/3のときabdの最大値は1/27

 

(2)

  

 

(3)

相加平均≧相乗平均より

  

また、(2)よりだから、

  

したがって、a=b=c=1/3のときに最小値100/3

(解答終了)

 

(2)は、シュワルツの不等式

  

を知っていれば、x=y=z=1とおき、

  

となることから、このことは容易に想像がつくが・・・。

 

(a,b,c)を原点を中心とする半径rの球の球面上x²+y²+z²=r²の点と考えると、

 

この球と平面x+y+z=1が共有点をもつ条件は、球の半径r≧平面x+y+z=1と原点との距離

  lag-siki-003.png

と解くこともできる。

等号が成立するのは、球x²+y²+z²=r²と平面x+y+z=1が接するとき。

 

(3)は、相加平均≧相乗平均だから

  lag-siki-004.png

よって、

  

したがって、最小値は12としてはいけない。最小値が12になるのはa=b=c=1のときだから、a+b+c=3≠1となり、問題の条件を満たさないからだ。

 

 

ラグランジュの未定乗数法を使うならば、次のように解くことができるだろう。

 

(1)は、 f(a,b,c)=abcg(a,b,c)=a+b+c–1=0とし、

  

とすると、

  

a≠0b≠0c≠0だから、abcで割ると

  

また、a+b+c=1だから、a=b=c=1/3

したがって、f(a,b,c)=abcの極値は

  

 

(2)は、f(a,b,c)=a²+b²+c²とし、

  

とすると、

  

これとa+b+c=1より、a=b=c=1/3となり、f(a,b,c)の極値は

  

 

(3)は、とおき、

  lag-siki-006.png

とすると、

  lag-siki-009.png

よって、

  lag-siki-007.png

何故ならば、a>0b>0のとき

  lag-siki-008.png

だから。

同様に、b=c

よって、a=b=c=1/3

したがって、f(a,b,c)の極値は

  

 

厳密なことを言うと、ラグランジュの未定乗数法を用いるとき、(1)、(2)、(3)のいずれの場合も、a=b=c=1/3のときにf(a,b,c)が極値であることを証明しないといけない。何故ならば、(a,b,c)=(1/3,1/3,1/3)は、あくまでf(a,b,c)が極値をもつ候補の点に過ぎず、この点で極値をとる保証がないから。そして、この証明はそれほど簡単なものではない。

 

 


前の10件 | 次の10件 多変数関数の微分 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。