ベクトル関数とその微分 [多変数関数の微分]
ベクトル関数とその微分
実数Rの部分集合Dに属する点tに対して、実関数x(t)、y(t)、z(t)が与えられているとき、ベクトル(x(t),y(t),z(t))を考えることができ、このベクトルF(t)=(x(t),y(t),g(t))をDからR³への1変数ベクトル値関数、または、ベクトル関数という。
Lを定ベクトル、t₀を一定の値とするとき、
ならば、tがt₀に限りなく近づくとき、F(t)はLに限りなく近づくといい、また、LはF(t)の極限といい、
であらわす。
イプシロン・デルタ論法で書くならば、
任意のε>0に対して、あるδ>0があって
が成り立つとき、
とあらわす。
また、
が成り立つとき、F(t)はt=t₀で連続であるという。また、区間Iのすべての点でtで連続であるとき、F(t)はIで連続であるという。
イプシロン・デルタ論法による、ベクトル関数F(t)のt=t₀における連続の定義は次の通り。
任意のε>0に対して、あるδ>0があって
が成り立つとき、F(t)はt=t₀において連続であるという。
ベクトル関数F(t)に関して、次の極限
が存在するとき、F(t)はt=t₀で微分可能という。また、この極限値Aをt=t₀における微分係数といい、
であらわす。
定理
とすると、次が成立する。
(ⅰ)
(ⅱ) F(t)は連続⇔x(t)、y(t)、z(t)は連続
(ⅲ)
この定理はほとんど明らかだと思うので、(ⅰ)だけを証明することにする。
【略証】
(ⅰ) ならば、
逆に、
ならば
(証明終)
ベクトル関数の微分については、実関数の微分と同様に次の公式が成り立つ。すなわち、A=A(t)、B=B(t)をtのベクトル関数m=m(t)をtのスカラー関数とすると、
である。
例1 Cが一定のベクトルのとき、
例2 mが定数のとき、
問題1 Aをtのベクトル関数とするとき、次のことを示せ。
(1)
ここで、A²=A・Aとする。
(2) |A|が一定であるとき、A とは直交する。
【解】
(1)
(2) |A|は一定だから、A²=A・A=|A|²も一定。
したがって、
また、(1)の結果より
よって、A とは直交する。
(解答終)
問題2
【解】
(解答終)
問題3 A(t)の微分係数をAの方向とこれに垂直な方向とに分解せよ。
【解】
Aと同じ方向の単位ベクトルをa、Aの大きさをAとすると、
aは単位ベクトルだから問題1より、aとは直交するので、
である。
(解答終)
A(t+Δt)とA(t)のなす角をΔθ、単位ベクトルaの増分をΔaとすると、
と同じ方向の単位ベクトルをbとすると、
だから、問題3の(1)は
である。
ベクトルの内積、外積 [多変数関数の微分]
ベクトルの内積、外積
§1 ベクトルの内積(ベクトルのスカラー積)
をaとbの内積といい、記号a・bや(a,b)などであらわす。すなわち、
である。
内積はスカラーで、bのaへの正射影を、aのbへの正射影をとすれば、
である。
a、bがともに零ベクトルでないとき、(1)式より、内積はθが鋭角ならば正、直角ならば0、鈍角ならば負である。また、a、bのいずれかが零ベクトル0であるとき、内積は0である。
ベクトルの内積に関しては、交換、結合法則が成り立つ。すなわち、
mをスカラーとすると、さらに、
が成り立つ。
先に述べたように、ベクトルaとベクトルbのなす角θが直角のときa・b=0である。
逆にa・b=0のとき、
(ⅰ) aとbのなす角θが直角
(ⅱ) a=0またはb=0
である。
特に、基本ベクトルi、j、kに対しては
である。
したがって、
ベクトルa、ベクトルbの成分を(a₁,a₂,a₃)、(b₁,b₂,b₃)とすれば、内積a・bは
で、aとbのなす角の余弦は、(1)、(2)式より
問1 a=2i–3j+5k、b =–2i–2j+2kが垂直であることを示せ。
【解】
よって、垂直である。
(解答終)
問2 a=2i–3j+kとb=3i–j–2kのなす角を求めよ。
【解】
(解答終)
問3 a=2i–3j+kのb=3j–4k上への正射影を求めよ。
【解】
aのb上への正射影は
である。
よって、
(解答終)
§2 ベクトルの外積(ベクトルのベクトル積)
平行でない2つのベクトルa、bを隣り合う2辺とする平行四辺形をもとに
(1) 大きさは、この平行四辺形の面積に等しい
(2) 向きは、この平行四辺形のある平面に垂直で、aからbへ右ネジをまわすときネジの進む方向と同じ
であるベクトルを作る。
このようにaとbから作ったベクトルをaとbの外積、または、ベクトル積といい、記号a×bであらわす。
aとbのなす角をθとすると、外積の大きさは
である。
aとbが平行のとき、およびaまたはbが零ベクトルであるとき、
と定義する。
a×b≠0のとき、a×bはb×aと大きさが等しく向きが反対だから
すなわち、ベクトルの外積は交換法則が成立しない。
しかし、分配法則は成り立ち、
さらに、
i、j、kを基本ベクトルとすると、
ベクトルaとベクトルbの成分をそれぞれ(a₁,a₂,a₃)、(b₁,b₂,b₃)とすると、外積は、分配法則が成り立つので、
これを行列式で書くと
である。
曲率円(接触円)を求める [多変数関数の微分]
曲率円(接触円)を求める
曲線y=f(x)上の点P(x₀,f(y₀))における曲線y=f(x)の曲率円(接触円)を求める前に、復習。
曲率円
曲線y=f(x)上の点P(x₀,y₀)において
で定まる円
を曲率円(接触円)という。
問題 次の曲率円を求めよ。
(1) 放物線y=x²上の点x=0とx=1における曲率円。
(2) 双曲線y=1/x上の点x=1における曲率円。
(3) 曲線y=logx上の点x=1における曲率円。
【解】
(1) y=f(x)=x²だから、f’(x)=2x、f''(x)=2。
x=0ではf(0)=0、f'(0)=0、f''(0)=2。
したがって、曲率円は
である。
x=1では、f(1)=1、f'(1)=2、f''(1)=2。
よって、x=1における曲率円は
である。
(2) y=f(x)=1/xだから、
x=1では、f’(1)=−1、f''(1)=2
よって、x=1における曲率円は
である。
(3) y=f(x)=logxとおくと、
である。
x=1では、f(1)=0、f'(1)=1、f''(1)=−1。
よって、x=1における曲率円は
(解答終)
曲率と曲率半径 [多変数関数の微分]
曲率と曲率半径
曲率とは曲線や曲面の曲がり具合をあらわすもので、曲率半径は曲率の逆数である。
問題 半径rの任意の円の微分方程式を作れ。
【解答】
円の中心を(a,b)とすると、半径rの円の方程式は
①の両辺をxで微分すると、
②の両辺をxで微分すると
②と③より
③と④を①に代入して、a、bを消去すると
よって、
(解答終)
もし、x=x₀の近傍で曲線y=f(x)を局所的に円に近似できるとすれば、⑤式からこの近似した円(曲率円)の半径(曲率半径)を
求めることができる。
また、②と③式より、円の中心(a,b)は
と求められる。
試しに、⑥式を用いて、放物線y=x²/2の点xにおける曲率円の半径を求めてみると、
よって、x=0のとき曲率半径r=1、x=0のとき曲率半径r=2√2になる。
図を見ると、x=0、ならびに、x=1の近傍の放物線を曲率円が表していることがわかるであろう。
以上のことをまとめると、次のようになる。
曲率円
曲線y=f(x)上の点P(x₀,y₀)において
で定まる円
を曲率円(接触円)という。
さて、一般論。
曲線上の点P(x,y)における接線とx軸のなす角をθ、曲線上でPに近い点Qにおける接線'がx軸となす角をθ+Δθとし、弧PQの長さをΔsとするとき、
を2点P、Q間の平均曲率といい、
(の絶対値)を曲率、この逆数を曲率半径という。
半径rの円があり、円周上の2点P、Qとこの円の中心のなす角、すなわち中心角をΔθとすると、弧PQの長さΔs=rΔθだから、
となるので、何故、曲率の逆数が曲率半径になるのかが分かるのではないか。
この両辺をxで微分すると、左辺は
だから、
また、
だから、
したがって、曲率と曲率半径κは
である。
点Pにおいて曲線に接し、接線に関して曲線と同じ側にあって、半径が|κ|に等しい円を曲率円といい、その中心)を曲率円の中心という。
問 y=x³の曲率を求めよ。
【解】
したがって、
(解答終了)
直交曲線の追加問題の答えだケロ [多変数関数の微分]
直交曲線の追加問題の答えだケロ
問題 次の曲線群の直交截線を求めよ。
の答えだケロ。
直截曲線の微分方程式を導く大本の微分方程式は
で、y'を−1/y'に置き換えると
となる。
だから、これを用いて⑨式を書き換えると
⑨³は③のxとyを置き換えた、入れ替えたもの、つまり、③と⑨³は同形の微分方程式。そして、③の微分方程式の解はx²+y²=Cxだから、これのxとyを入れ替えたもの、つまり、y²+x²=Cyは⑨³の(一般)解になるはずだケロ。
ならなければおかしいケロ!!
このことに気づけば、微分方程式
を解かずに、この微分方程式④の一般解x²+y²=Cyを求められるのであった。
なのだけれど、グラフを見るとわかる通り、y=0、つまり、x軸は曲線群x²+y²=Cxのすべての曲線に直交しているので、y=0もこの曲線群x²+y²=Cxの直交截線である。
y=0のときy'=0だから、曲線(?)y=0は④式を満たしている。つまり、y=0は微分方程式④の解の一つである。でも、これは一般解x²+y²=Cyであらわすことができないので、y=0は④の特異解ということになる。
なお、微分方程式④は次のように解くとよい。
微分方程式④の右辺の分子分母をx²で割ると、
となるので、これは同次形と呼ばれる微分方程式。
このタイプの微分方程式は、y=txとして、
直交曲線の追加問題 [多変数関数の微分]
直交曲線の追加問題
今日、ブログにアップした直交曲線群(直交截線)の追加問題だケロ。
問題 次の曲線群の直交截線を求めよ。
①の両辺をxで微分すると、
①に②に代入し、Cを消去すると、
③のy'を−1/y'に置き換えると、
③から
点P(x,y)でこれに直交する曲線の(接線)の傾きをdy/dxとすると、
と、直交截線の微分方程式を作ってもいい。
さて、この微分方程式④をお前らに解いてもらおうじゃないか。
一見、簡単そうに見えるけれど、真面目にこの微分方程式を解こうとすると、おそらく、地獄を見る。高校以来お馴染みの(単純な)変数分離法ではこの微分方程式は解けない!!
しかし、ずる賢いヤツ、あるいは、勘のいいヤツは、④を解かずにこの解をすぐに見つけ出せるのであった。
直交曲線群 [多変数関数の微分]
直交曲線群
パラメータc、1個の平面曲線群
のすべての曲線に一定の角度αで交わる曲線を等角直線といい、とくにα=±π/2(α=±90°)のとき直交曲線という。
微分方程式
で与えられる曲線群に対する直交曲線群の微分方程式は
である。
曲線y=φ(x)に点P(x,y)でy=ψ(x)で直交するとすると、すなわち、点Pにおけるy=φ(x)とy=ψ(x)の接線が直交するとすると、この曲線の接線の傾きφ'(x)とψ'(x)の積は−1。
したがって、
(1)に代入すると、
ここで、改めて
とおくと、(1’)は(2)になるというわけ。
例題 放物線y=ax²(a≠0の任意実数)に直交する曲線群の方程式を求めよ。
をxで微分すると、
①×2−②×x
x≠0とすると、
曲線y=ax²に点P(x,y)における曲線の傾きをとすると、
xy≠0のとき、
したがって、
xy=0のとき、y=ax²はx軸に接するからy=0は直交する曲線になる(特異解)。
したがって、とy=0が直交曲線群である。
(解答終)
y=ax²を、
x≠0のとき
と変形し、さらに、この両辺をxで微分し
として、aを消去することもできる。
問題 次の曲線群と直交する曲線群を求めよ。
【解】
の両辺をxで微分すると、
P(x,y)においてxy=kに直交する曲線の勾配をdy/dxとすると、
(2)
の両辺をxで微分すると、
y–1≠0のとき
P(x,y)においてxy=kに直交する曲線の勾配をdy/dxとすると、
を変数分離法で解くと、
y=1は円群x²+y²+2x–2y+C=0に直交し、これは①のa=0の場合(特殊解)(※)。
x=−1も円群x²+y²+2x–2y+C=0に直交する(特異解)。
(解答終)
(※)
だから①のaは、a=0にはならないけれど、式の形は同じということで、y=1を①の特殊解とした。
第22回 包絡線 [多変数関数の微分]
第22回 包絡線
αをパラメータとして含む曲線群
の各曲線と1点だけで接する曲線を、この曲線族の包絡線という。
f(x,y,α)をC¹級とする。曲線群と包絡線の接点を(x,y)とすると、xとyはαの関数である。
これを
とする。
(1)と(2)は接するのだから、
また、φ(α)、ψ(α)はf(x,y,α)=0上の点だから
これをαで微分すると、
よって、包絡線は、2曲線
の交点(φ(α),ψ(α))=0の軌跡であり、この2式からαを消去した方程式の曲線Cに含まれる。そして、曲線Cは曲線群の特異点を含むことがある。
例
この場合、はx–α=0。よって、x=αのときy⁴–y²=0となりy=0、±1となるが、点(α,0)は特異点(結節点)なので、直線y=0は特異点(α,0)の軌跡。したがって、包絡線はy=±1である。(右図参照)
問題1 次の曲線群の包絡線を求めよ。
【解】
(1)
①の両辺をαで偏微分すると
①の両辺を②乗すると、
よって、包絡線は放物線y²=4x
(2)
①の両辺をαで偏微分すると、
①と②を2乗して足すと
よって、包絡線は原点を中心とする半径pの円である。
をαで偏微分すると、
したがって、
x=−1は包絡線であり、x=0は特異点の軌跡。
(解答終了)
とすると、
したがって、(0,α)は特異点である。
また、
よって、(x,y)=(0,α)において
よって、(0,α)は結節点で接線は2本引ける。
問題2 次の包絡線を求めよ。
(1) 円x²+y²=r²のy軸に平行な弦を直径とする円の曲線群
(2) 座標軸で切り取られる部分の長さが一定である曲線群
【解】
(1) 弦の両端をA、B、その中点をCとし、C(α,0)とする。
三角ACOは直角三角形だから、ABを弦とする円の半径ACは
よって、円の方程式は
αで偏微分すると、
これを①に代入すると、
(2) 直線の方程式を
とすると、条件より
①をαで偏微分すると、
②をαで微分すると
③に代入すると、
とおくと、
これを①に代入すると、
②に代入すると、
④を②乗したものと⑤の辺々を掛けると、
よって、アステロイドになる。
(解答終了)
第21回 平面曲線 [多変数関数の微分]
第21回 平面曲線
§1 通常点と特異点
関数f(x,y)をC¹級の関数とし、(x₀,y₀)を曲線f(x,y)=0上の点とする。とが同時に0にならないとき(x₀,y₀)を通常点(正則点)といい、となるとき特異点という。
(x₀,y₀)が通常点のとき、ならばx₀の近傍内にある曲線の一部はy=φ(x)、ならばx=φ(x)で表される。通常点(x₀,y₀)では接線がただ1つ存在し、その方程式は
である。
例1 f(x,y)=x²+y²–a²= 0(a>0)とすると
。
したがって、になるのは(x₀,y₀)=(0,0)であるが、(0,0)は曲線上の点ではないので、曲線f(x,y)=x²+y²–1= 0は特異点を持たず、通常点のみである。
また、曲線(原点を中心とする半径aの円)上の点(x₀,y₀)における接線の方程式は
例2 f(x,y)=y³–x⁴=0とすると、
したがって、(0,0)は特異点。
この曲線は と同一の曲線なので、
となり、φ'(0)=0で、この曲線はx=0でx軸と接している。
例3 f(x,y)=y²–2x²y+x⁴–x⁵= 0とすると、
したがって、(0,0)は特異点である。
y²–2x²y+x⁴–x⁵= 0をyについて解くと、になるので、
したがって、x=0での微分係数は0となり、この曲線はx軸に接している。
この曲線の特異点(0,0)のような特異点を嘴点と呼ぶ
。
§2 特異点の分類
f(x,y)をC²級の関数とし、(x₀,y₀)を曲線f(x,y)=0の特異点とする。が同時に0にならないとき、(x₀,y₀)を2重点という。
とおくと、2重点は次のように分類できる。
(1) D>0ならば結節点で、(x₀,y₀)で相異なる2本の接線が引ける
(2) D=0ならば通常は尖点で、(x₀,y₀)における接線は1本である。
(3) D<0ならば孤立点で、その近傍内にある曲線の部分は(x₀,y₀)だけである。
例2、例3の特異点は、D=0になるので、尖点である。
問題 曲線y²=x²(x+a)の特異点を調べよ。
【解】
f(x,y)=y²–x²(x+a)とおくと、
を解くと、
になる。
a≠0のとき
したがって、特異点は(0,0)のみである。
特異点の判別をするために、f(x,y)の2次偏導関数を求めると、
したがって、
だから、
a>0のときは結節点、
a=0のときは尖点、
a<0のときは孤立点
(解答終了)
参考までに、a=3、a=−3のときの、曲線y²=x²(x+a)の概形を以下に示す。
ラグランジュの未定乗数法を使って大学入試の有名問題を解く [多変数関数の微分]
大学入試の問題で非常に有名な問題がある。
問題 正の実数a、b、cがa+b+c=1を満たすとき、次の問に答えよ。
(1) abcの最大値を求めよ。
(2) であることを示せ。
(3) の最小値を求めよ。
【解】
(1) 相乗平均≦相加平均より
よって、a=b=c=1/3のときabdの最大値は1/27
(2)
(3)
相加平均≧相乗平均より
また、(2)よりだから、
したがって、a=b=c=1/3のときに最小値100/3。
(解答終了)
(2)は、シュワルツの不等式
を知っていれば、x=y=z=1とおき、
となることから、このことは容易に想像がつくが・・・。
(a,b,c)を原点を中心とする半径rの球の球面上x²+y²+z²=r²の点と考えると、
この球と平面x+y+z=1が共有点をもつ条件は、球の半径r≧平面x+y+z=1と原点との距離
と解くこともできる。
等号が成立するのは、球x²+y²+z²=r²と平面x+y+z=1が接するとき。
(3)は、相加平均≧相乗平均だから
よって、
したがって、最小値は12としてはいけない。最小値が12になるのはa=b=c=1のときだから、a+b+c=3≠1となり、問題の条件を満たさないからだ。
ラグランジュの未定乗数法を使うならば、次のように解くことができるだろう。
(1)は、 f(a,b,c)=abc、g(a,b,c)=a+b+c–1=0とし、
とすると、
a≠0、b≠0、c≠0だから、abcで割ると
また、a+b+c=1だから、a=b=c=1/3。
したがって、f(a,b,c)=abcの極値は
(2)は、f(a,b,c)=a²+b²+c²とし、
とすると、
これとa+b+c=1より、a=b=c=1/3となり、f(a,b,c)の極値は
(3)は、とおき、
とすると、
よって、
何故ならば、a>0、b>0のとき
だから。
同様に、b=c。
よって、a=b=c=1/3。
したがって、f(a,b,c)の極値は
厳密なことを言うと、ラグランジュの未定乗数法を用いるとき、(1)、(2)、(3)のいずれの場合も、a=b=c=1/3のときにf(a,b,c)が極値であることを証明しないといけない。何故ならば、(a,b,c)=(1/3,1/3,1/3)は、あくまでf(a,b,c)が極値をもつ候補の点に過ぎず、この点で極値をとる保証がないから。そして、この証明はそれほど簡単なものではない。