ベクトル 空間ベクトルの内積2 [ベクトル]
ベクトル 空間ベクトルの内積2
問題1 空間中に3点A、B、Cが与えられている。ただし、この3点は1直線上にないものとする。原点Oからこの3点を通る平面におろした垂線の足をHとする。次の問いに答えよ。
(1) を証明せよ。
(2) A、B、Cの座標をそれぞれ(1,0,0)、(1,1,0)、(−1,2,1)とするとき、Hの座標を求めよ。
【解】
(1) Hは原点OからA、B、Cを通る平面におろした垂線だから、OH⊥AH。
同様に、OH⊥BH、OH⊥CHから
(2) Hの座標を(x,y,z)とする。
(1)より
よって
x=x+yよりy=0。
よって、
だから、
となり、
H(0,0,0)は解として不適なので、
(解答終わり)
うるさいことを言うと、求めたH(1/5,0,2/5)がA(1,0,0)、B(1,1,0)、C(−1,2,1)と同一平面にあることを示さないといけない。
A、B、Cの3点を通る平面の方程式をとすると、A(1,0,0)、B(1,1,0)、C(−1,2,1)を通るので
これから、この平面の方程式がx+2z=1であることが分かり、(1/5,0,2/5)がこの平面上にあることが示される。
しかし、ここまでするのであれば、次のように解答したほうがいい。
垂線OHは(1,0,2)に平行(※)。
点Hは垂線(x,y,z)=(t,0,2t)と平面x+2z=1の交点。よって、
Hは(1/5,0,2/5)である。
このように解答すれば、連立2次方程式を解かなくてすむし、面倒な議論をしなくてすむ。
(※) 平面π:ax+by+cz=dとは垂直!!
なぜならば、平面π上に(x,y,z)とは異なる点があるとすると
よって、平面πとは垂直。
問題2 Oを座標の原点とし、
とする。次の問いに答えよ。
(1) ∠ABC=θとして、cosθを求めよ。
(2) △ABCの面積を求めよ。【解答】
(1)よって
また、
よって、
(2) cosθ=1/2よりθ=60°。
ベクトル 空間ベクトルの内積と成分 [ベクトル]
ベクトル 空間ベクトルの内積と成分
§ 空間ベクトルの内積の成分表示
空間では、ベクトルは次のように3つの成分で表される。
基本ベクトルを用いて表すと
したがって、との内積は
となり、
になる。
何故ならば、
だから。
§ 方向余弦
x軸、y軸、z軸の正の向きとベクトルのなす角を、それぞれ、α、β、γとすると
となり、同様に
となる。
また、
だから、
この3つの組をの方向余弦といい、
であらわす。
のとき
したがって、方向余弦には次の関係がある。
§ 問題編
ベクトルのなす角θ
問題1 のなす角θ(0°≦θ≦180°)を求めよ。
【解】また、
よって
よって、θ=30°
(解答終わり)
問題2 のとき
(1) ベクトルのなす角を求めよ。
(2) の両方に垂直な単位ベクトルを求めよ。
【解】(1) 、また
よってよって、θ=60°。
(2) の両方に垂直な単位ベクトルをとする。
単位ベクトルなのではに垂直なので
これを代入すると
よって、
(解答終わり)
問題3 大きさが2、x軸、y軸の正の向きとなす角がそれぞれ45°、60°であるベクトルの成分を求めよ。、また、そのベクトルがz軸の正の向きとなす角度を求めよ。
【解】求めるベクトルの方向余弦をl、m、nとすると
よって
したがって、γ=60°、120°。
求めるべきベクトルをとすると
よって、(√2,1,1)または(√2,1,−1)。
(解答終わり)問題3から分かるように、一般にベクトルがx軸、y軸、z軸の生の向きとなす角α、β、γの和α+β+γは、一般に180°にならないので、注意して欲しいにゃ。
ベクトル 内積と成分(平面の場合) [ベクトル]
ベクトル 内積と成分(平面の場合)
平面上にある2つのベクトルの内積の成分表示を求めることにする。
であり、基本ベクトルをとすると、それぞれ
となる。
したがって、内積は
また基本ベクトルは大きさが1で互いに直交するので、
この結果を上式に代入すると
特に、と基本ベクトルとの内積は
つまり、ベクトルの成分はベクトルと基本ベクトルとの内積になっている。
問題1 のなす角θ(0≦θ≦180°)を求めよ。
【解】内積の定義は
よって、
内積を求めると
また、
よって、
問題2 ベクトルに垂直で、大きさがに等しいベクトルを求めよ。
【解】とする。
だから
だから
よって、
これを解くと(x,y)=(3,−4)、(−3,4)。
よって
問題3 3点A(−1,0)、B(0,2)、C(−3,1)が与えられている。
を満たす第1象限の点Dの座標を求めよ。
点Dの座標を(x,y)とする。
よって、
これを解くと、(x,y)=(2,1),(-2,3)。
Dは第1象限の点なので、D(2,1)。
問題4 ベクトルに対して、ベクトルの成分を、次のそれぞれの場合について求めよ。
(1) とが平行の場合
(2) とが垂直の場合
【解】(1) とが平行なのでを満たす実数kが存在しなければならない。
よってまた、であり、b=−2
(2) だからでなければならない。
よってまた、のとき
であり、よって、b=2である。
ベクトル ベクトルのなす角とベクトルの垂直 [ベクトル]
ベクトル ベクトルのなす角とベクトルの垂直
ベクトルのなす角をθとする。
このベクトルの内積はであり、であるとき、
になる。
また、の必要十分な条件は、のとき、、つまり
である。
問題1 △ABCと点Oについて、次のことを証明せよ。
OA⊥BC、OB⊥CAならばOC⊥ABである。【証明】
とする。
OA⊥BCから
OB⊥CAから
①と②より
よって、OC⊥ABである。
(証明終わり)これは、「三角形ABCの3垂線は一点(垂心)で交わる」ことの証明になっている。
問題2 2つのベクトルの大きさが等しいとき、ベクトルとは垂直であることを示せ。
【証明】条件より
との内積をとると
よって、とは垂直である。
(証明終わり)これは、ひし形の対角線は互いに直交することの証明になっている。
問題3 はともに零ベクトルではなく、
であるとする。
このとき、次の問いに答えよ。
(1) のなす角度を求めよ。(2) はの何倍か。
【解】とする。
(1)
よって、θ=120°。
(2)
よって、√3倍である。
(解答終わり】とすると、
という条件から、△OAC、△OBCは正三角形になる。
何故ならば、ベクトルの和の定義よOB=OAで、OA=AC=OBとなって、△OACは正三角形。同様に、△OBCも正三角形。
∠AOB=∠AOC+∠COB=60°+60°=120°
また、△OABに対して余弦定理を使うと
このように解くこともできる。
問題4 平面上に和が零ベクトルになる3つのベクトルがあって、OA=1、OB=2、OC=√2である。
このとき、次の問いに答えよ。(1) のなす角度をθ(0≦θ≦π)とするとき、sinθを求めよ。
(2) △OABの面積を求めよ。【解】
(1) とする。
和が零ベクトルになるのでsin²θ+cos²θ=1だから
(2)
(3) だから、Oは△ABCの重心(※)。
よって、【解答終わり】
(※)△ABCの重心をGとすると
となり、Oと△ABCの重心Cは一致する。
△ABC=3△OABになるのは、COの延長とABの交点をDとすると、Oは△ABCの重心でCD=3ODとなるから。
ベクトル 内積の計算例 [ベクトル]
ベクトル 内積の計算例
内積の定義式は
そして、この定義から
また、内積では次のことが成り立つ
問題1 ベクトルの内積について、次のことを証明せよ。
【解】
(1) 内積の演算規則に従って計算するならば、次のようになる。
(2) と考えて
馬鹿正直に計算してもいいけれど、(1)の結果を使うと
(3)
(証明終わり)
どの規則がどこで使われているかわかるように書いたけれど、実際計算するときには、このように計算する必要はない。
実数の展開の公式などをつかって、実数の掛け算と同じようにベクトルの内積を計算すればよい。
次に、(2)の計算の幾何学的な意味を考えることにする。
△OABがあり、とすると、
となる。
そして、余弦定理から
つまり、問題1の(2)は余弦定理と同じものと考えることができ、ベクトルの簡単な計算で余弦定理を導いていることになる。
問題2 ベクトルについて、次の等式を証明せよ。
△ABCの辺BCの中点をMとし、
とするとき、上式からどのような定理が得られるか。
問題1の(1)、(2)より
上式の辺々を足し合わせると、
また
よって、
これは中線定理である。
(解答終わり)
問題1の(1)、(2)の結果を使わずに、
と、実際に計算しても苦労ではないけれど・・・。
問題3 ベクトルの大きさがそれぞれ4、10で、のなす角が60°であるとき、の大きさを求めよ。
【解】
ベクトル ベクトルの内積 [ベクトル]
ベクトル ベクトルの内積
ベクトルの内積の定義
のなす角(共通の始点がOとなるように平行移動したときにはさむ角)をθとすると、の内積は
で定義される。
なお、は、それぞれベクトルの大きさをあらわす。
この定義から、次のことがすぐに言える。
なぜならば、θ=0°のときcosθ=1であり、内積の定義式①より
となるから。
また、のとき
である。
何故ならば、のとき、2つのベクトルのなす角θ=90°でcosθ=0となり、内積の定義式1より
になる。逆に
となるけれど、仮定よりなので、θ=90°となり、となる。
ベクトルの内積については、次のことが成り立つ。
(1)は交換法則、(2)は結合法則、(3)は分配法則であり、これらが成り立つ。
α、β、γが実数とすると、(1) α・β=β・α
(2) (α・β)・γ=α・(β・γ)(3) α・(β+γ)=α・β+α・γ
が成立するので、ベクトルの内積は実数同士の掛け算のように計算をしてよい。
つ・ま・り、内積の計算の仕方がよくわからなかったら、上についている矢印をとって考え、普通の掛け算のように計算をしていい。
ということで、ベクトルの内積に慣れるために、問題を解くことにする。
問題1 1辺の長さが1である正三角形ABCがある。
(1) の値を求めよ。
(2) の値を求めよ。
(3) の値を求めよ。
(1) とのなす角度は60°、また、。
よって、
次のように分配法則を使って計算してもよい。
(3)
とのなす角は180°だから、
あるいは、
だから、
と計算してもよい。
また、
と計算してもよい。
(解答終わり)
問題2 △ABCにおいて、とする。
(1) △ABCが正三角形ならば、
であることを示せ。
(2) (1)の逆は成り立つか。
【解】(1) 正三角形ABCの一辺の長さをaとすると
同様に
よって、
(2)
また、
①に②を代入すると
同様に、
よって、△ABCは正三角形である。
ベクトル 位置ベクトル [ベクトル]
ベクトル 位置ベクトル
原点Oが定まっているとき、点Aの位置は
で定められる。このようなベクトルを位置ベクトルという。
だから、
になる。
ABをm:nにわける点Pの位置ベクトルをとすると、
つまり、
である。
m=nのときは中点で
になる。
また、点A、B、Cの位置ベクトルを
とするとき、△ABCの重心をGとすると
である。
△ABCの重心Gは、BCの中点をMとすると、重心Gは中線AMを2:1に内分する。
よって、
では、問題を。
問題1 空間に、同一線上にない3点A、B、Cがある。次の条件を満たすとき、点G、PはA、B、Cに対してどのような位置関係にあるか。
【解】
点A、B、C、G、Pの位置ベクトルを
とする。
(1)
よって、Gは△ABCの重心である。
(2)
よって、PはABを1:2に内分する点である。
(解答終わり)
問題2 空間に3点O、A、Bがある。点Pが直線AB上にあるための必要十分条件は、次の式が成り立つことであることを証明せよ。
【証明】
点Pが直線AB上にあるならば、
となるtが存在する。
s=1−tとすると
逆に、
であるとすれば、s=1−tだから
となり、点Pは直線AB上に存在する。
ベクトル 方べきの定理 [ベクトル]
ベクトル 方べきの定理
円の方程式のベクトル表示の最後として、方べきの定理に関係する問題を解いてみることにする。
問題1 平面上に定点Oと半径rの定円Cとがあり、である。いま、Oを通って円Cと交わる直線lをひき、その交点の一つをPとし、l上の単位ベクトルをとする。
(1) とrとの関係式を求め、それから得られるtのtの2つの値をt₁、t₂とすると、積t₁t₂はlの方向に関係なく一定であることを示せ。(2) 2の結果の図形的な意味を説明せよ。
【解】(1) 円の方程式は
交点Pは円周上にあるので
2次方程式の解と係数の関係より
よって、t₁t₂は、つまり、直線lの方向に関係なく一定である。
(2) 方べきの定理!!
よって、これが方べきの定理であることは明らか。
(解答終わり)
ベクトルを使うと、このように方べきの定理は証明される。
問題2 円Cの周上に1点Oがある。いま、Oから出る半直線上にOP・OQ=k(kは正の定数)となるように、2点P、Qをとるものとする。
Pが円Cの周上を動くとき、QはOCに垂直な直線上を動くことを証明せよ。【解】
点P、点Qの位置ベクトルをとする。
は同方向のベクトルなので
条件OP・OQ=kより
円Cの方程式は
で、点Pはこの円周上にあるので
①を使うと
これはQがOCに垂直な直線を動くことをあらわす(※)。
(証明終わり)
(※)
このことはベクトルの成分を使って考えるとがわかりやすいとすると、
となり、Q(x,y)は(a,b)に垂直な直線上を移動する。
ベクトルを使うならば、
とやればよい。
そして、この問題は、反転によって原点を通る円はOCに垂直な直線に移されるということの証明になっているのであった。
ベクトル 円の接線の方程式 [ベクトル]
ベクトル 円の接線の方程式
前回のベクトルを用いた円の方程式に引き続き、ベクトルを用いた円の接線の方程式の表現形式について説明することにする。
原点Oとする平面上の動点Pの位置ベクトルをとする。この平面上で、中心、半径rの円があり、この円周上の点P₁におけるこの円の接線の方程式は、とすると
である。
P₁における円Cの満たすべき条件は、
P₁P⊥CPまたはP=P₁である。
であるから、P₁P⊥CPを内積を用いて表現すると、
となる。
になる。
また、P=P₁のとき、だから、①を満たす。
よって、点P₁における円Cの接線の方程式は
である。
原点Oを中心とする半径rのx²+y²=r²の接点P₁(x₁,y₁)における接線の方程式は
になるという話をした。原点が円の中心なので
と、①を使って、この接線の方程式を簡単に求めることができる。
同様に、より一般のC=(a,b)を中心とする半径rの接点P₁(x₁,y₁)における接線の方程式も
と簡単に求めることができる。
ちなみに、
のときの内積は
である。
問題 平面上で、を定点、を動点の位置ベクトルとするとき、
はどのような曲線をあらわすか。また、この曲線上の点における接線は
であることを証明せよ。
【解】
よって、原点と点を直径とする円である。
円の中心は
⑨より
は円上にあるので
③にこれを代入すると
(解答終わり)
話が後先になってしまったのだけれど、直線l:ax+by+c=0ととは直交する。
この辺々を引くと
となり、直交していることがわかる。
また、に垂直で、点P₁(x₁,y₁)を通る直線の方程式は
となる。P=P₁のときも④は成り立つ。
で、c=−(ax₁+by₁)とすると
ベクトル 円の方程式 [ベクトル]
ベクトル 円の方程式
点を中心とする半径rの円のベクトルを用いた方程式は
円の中心Cが原点の時は
となる。
ベクトルの円の方程式の計算では内積の知識が必須なので、ベクトルの内積の復習。
ベクトルの内積は、ベクトルの大きさを、さらにのなす角度をθとすると
である。
また、内積を
とも表記する。
この定義から、
であり、のとき
である。
次に、内積の幾何学的な意味について考えることにする。
始点をOとするという2つのベクトルがあるとする。
BからOAにおろした垂線の足をB'とすると、よって、
になる。
つまり、内積は、OAと、OBのOA上への正射影OB'との積と考えることができる。
ベクトルの内積については次のことが成り立つ。
これを見るとわかるけれど、内積は実数同士の掛け算の自然な延長になっている。
だから、普通の実数同士の掛け算のように計算をしてよい。
これで準備は整った。
問題を解いてみることにする。問題1 Oを原点とする平面上で、A、B、Cを定点、Pを動点とし、その位置ベクトルを
とする。また、rを正の定数とするとき、次の条件を満たすPの軌跡は何か。
【解】
(1)
となり、Pの軌跡はCを中心とする半径rの円周である。
(2)
か
AP⊥BP
のいずれかで、P=A、P=B、∠APB=90°
のどちらかであり、Pの軌跡はABを直径とする円周である。(別解)
よって、Pの軌跡はABの中点を中心、AB/2を半径とする円周上である。
ここで、
をあらわすものとする。
(解答終わり)
少し補足説明をすると、
∠APB=90°のとき、円周角の定理より、点PはABを直径とする円周上に存在することになる。そして、A=P、B=PからA、Bも含まれ、ABを直径とする円になる。問題2 平面上で、A、Bは定点、Pは動点とする。また、cを正の定数とするとき、つぎの条件を満たす点Pの軌跡を求めよ。
【解】
A、B、Pの位置ベクトルをとする。
(1)よって、ABの中点を中心とする半径c/2の円周。
(2)
線分ABの中点をCとすると、
はABの中点Cの位置ベクトルになり、
これは、ABの中点Cと点Pを結ぶCPがABと直交しているということを意味しており、したがって、Pの軌跡はABの垂直二等分線である。
(別解)
よって、Pの軌跡は線分ABの垂直二等分線としてもよい。