2次曲線 [数学基礎]
2次曲線
§1 楕円
2つの定点からの距離の和が一定である動点の軌跡を楕円という。この2つの定点を楕円の焦点という。
焦点をF(c,0)、F'(−c,0)、動点Pの座標を(x,y)とし、距離の和を2a(a>c>0)とすると、
両辺を2乗すると、
両辺を2乗すると、
また、このことから、楕円
の焦点の座標は
AA'=2aを長軸の長さ、長径、BB'=2bを短軸の長さ、短径という。
例 楕円
a=5、b=4とすると、
よって、焦点は(−3,0)、(3,0)。
a=b>0とすると、(1)は
これは原点Oを中心とする半径aの円になる。そして、このとき、焦点は円の中心Oになる。
§2 双曲線
2定点からの距離の差が一定である動点の軌跡を双曲線という。
この2定点を双曲線の焦点という。
2定点をF(c,0)、F'(−c,0)、動点Pの座標を(x,y)、距離の差を2a(c>a)とする。
両辺を2乗すると、
両辺を2乗すると、
双曲線
の焦点は
である。
双曲線の漸近線は、
§3 放物線
定点と定直線との距離が一定の動点の軌跡を放物線という。
このとき、定点を放物線の焦点、定直線を準線という。
定点Fの座標を(p,0)、定直線(準線)をx=–p、動点Pの座標を(x,y)とし、Pから直線x=–pにおろした垂線の足をHとする。
両辺を2乗すると、
2次曲線の標準化の例 [数学基礎]
2次曲線の標準化の例
2次曲線の方程式の一般形は
3×3の対称行列を用いると、
となる。
なのだが、座標軸の回転に関係する部分は、(1)の2次の項(の係数)だけなので、それに対応する対称行列
について、まず考える。
問題1 次の2次曲線を標準形にせよ。
【解】
とすると、固有方程式は
t=8のとき
だから、大きさが1の固有ベクトルは、
これは、基本ベクトル
を反時計回りにθ=45°=π/4(rad)回転させたものだから、
これをに代入すると、
ここで、さらに
と座標変換すると、
よって、この曲線は楕円である。
(解答終)
これは図形や点を原点まわりに45°回転させるのではなく、x軸、y軸を45°回転し、それを新しいx'軸、y'軸とする主軸変換、座標変換!!
そのため、
となっている。
①式は
と書き換えられるので、高校で習う1次変換とは違うことに注意!!
これ以上余計なことを書くと混乱させるだけだから、これ以上は書くまい。
問題2 次の2次曲線を標準化せよ。
よって、行列Aの固有値はt=0,2。
t=2のとき
t=0のとき
したがって、行列Aの大きさ1の固有ベクトルは、
これは基本ベクトル
を45°時計回りに回展させたものだから、
とし、x²–2xy+y²+2x–6 y=0に代入すると、
さらに、
と変換すると、
となり、この曲線は放物線である。
(解答終)
2次形式の標準化の追加問題!! [数学基礎]
2次形式の標準化の追加問題!!
【解】
だから、
とおくと、固有値は
t=16のとき
したがって、大きさ1のAの固有ベクトルは
そこで、
(解答終)
行列の大きさ1の固有ベクトルは
は基本ベクトル
を原点まわりに時計回りにθ=π/6(rad)=30°回転させたものだから、この曲線を30°反時計回りに回転させれば、だ円4x²+16y²=16になる。
1次変換を使うならば
なお、
変数x、yと実係数a、b、hで定められる関係式
のとき、とおき、公式⑨³
を使うならば、a=7、b=13、h=3√3だから
と、簡単に求めることができる。
2次形式の標準化 [数学基礎]
2次形式の標準化
2次形式
変数x、yと実係数a、b、hで定められる関係式
を2次形式という。
これは行列を使うと
で表される。
例
ところで、対称行列は適当な直交行列P()を用いて
と対角化することができる。
そこで、
とすると、
と、2次形式F(x,y)=ax²+2hxy+by²を2次形式の標準形
にすることができる。
ここで、α、βは行列Aの固有値である。
問題1 次の2次系式を標準化せよ。
【解】
よって、行列Aの固有値はt=2、8。
t=2のとき
t=8のとき
したがって、t=2、8のときの固有ベクトルは、
したがって、この固有ベクトルの単位ベクトルは
よって、
で、
したがって、とすると、
t=3に対する単位固有ベクトルは
t=−2に対する単位固有ベクトルは
したがって、直交行列Pは
となり、
したがって、とおくと、
(解答終)
x軸とy軸をθだけ回転した新しい座標軸をu、vとする。
このとき、xy座標系での点Pの成分(x,y)と、新しいuv座標系での点Pの成分(u,v)との間には
という関係がある。
行列を用いて表すと、
ここで、
とおくと、行列Pの行と列の成分を入れ替えた行列(転置行列)は
となり、
⑨を2次形式F(x,y)=ax²+2hxy+by²に代入すると、
uvの項の係数を0にするには、θを
にとればよく、このようなθをとれば2次形式の標準形になる。
問題2 2次曲線2x²–2xy+2y²=9 を標準形にせよ。
【答】
だから、の対角化を図る。
行列Aの固有方程式は
t=1のときの固有ベクトルは
t=3のときの固有ベクトルは
固有ベクトルの正規化――大きさ1の単位ベクトルにすること――をすると、
したがって、
このようにPを選ぶと
なるケロ(実際に計算して、こうなることを確かめよ)。
だから、として、2x²–2xy+2y²=9を標準化すると、u²+3v²=9になる。
(解答終)
したがって、この曲線はu軸を長軸、v軸を短軸とする楕円。
対称行列の固有値をα、βとすると、2次曲線ax²+2hxy+by²=cは標準形αu²+βv²=cに変換できるので、上のような面倒な計算をせずとも、問題2の場合、α=1、β=3だから、u²+3v²=9とすぐに求められる。
また、軸の回転角は、⑨³を用いると、この場合、a=b、h=−1の場合なので、θ=π/4と求めることができる。
行列の固有値と固有ベクトル [数学基礎]
行列の固有値と固有ベクトル
1次変換(行列)に対して
を満たすλをAの固有値、を固有ベクトルという。
単位行列とすると、(1)式は
と変形できるので、が存在するための必要十分条件は、行列A–λ Eが逆行列を持たないこと、すなわち、
で、(2)式をAの固有方程式という。
2次方程式(2)の解をα、βとすると、解と係数の関係より、
が成り立つ。
ここで、
のことで、これは行列の行列式である。
問題1 次の行列の固有値と固有ベクトルを求めよ。
【解】
固有ベクトルを、固有値をkとする。
(1)
x=y=0以外の解をもつためには、
k=1のとき、①式より
ここで、x=tとおくと、y=−t。
よって、固有ベクトルは
k=2のとき①より
y=sとおくと、x=−2s。
よって、固有ベクトルは
(2)
②式より
よって、固有ベクトルは
である。
(解答終)
問題2 次の問に答えよ。
(1) 行列の固有値と固有ベクトルを求めなさい。
(2) となる行列Pを求めよ。
(3) nが自然数のときを求めよ。
【解】
(1) Aの固有値をk、固有ベクトルをとすると、
以外の解をもつためには、
k=2のとき、①式より
k=5のとき、①式より
(2)
ここで、とおくと、
したがって、α、βは行列Aの固有値で、はその固有ベクトル。
よって、α=2、β=5とすると、
(3) a=1,b=1とおく。
α=2のとき
β=5のとき
よって、
後の計算はヨロシク!!
(解答終)
が成立するので、これを利用して
と計算してもよい。
2次曲線プチ [数学基礎]
2次曲線プチ
問題1 次の曲線を原点の周りに45°回転してえられる曲線の方程式を求めよ。
【解】
(x,y)を原点まわりに角度θ回転して得られる点を(x',y')とすると、次の関係が成立する。
逆に、(x',y')を原点まわりに角度−θ回転すれば(x,y)に戻るので、次の関係が成立する。
したがって、θ=45°のとき、
になる。
(1) x²–y²=a²にを代入すると、
(2) x²+xy+y²=6にを代入すると、
だから、
(3) x²–2xy+y²–2x–2y+1=0にを代入すると、
よって、
図形を回転させても図形の形は変わらないので、(1)のx²–y²=a²(a>0)は直角双曲線であり、(2)のx²+xy+y²=6は楕円。そして、(3)の曲線x²–2xy+y²–2x–2y+1=0は放物線である。
実は、2次曲線
には、曲線の種類を判別できる、判別式D=ac–b²という判別式があり、
D>0のとき楕円
D=0のとき放物線
D<0のとき双曲線
になる。
こうなっていることを、問題の(1)、(2)、(3)の場合で確かめて欲しい。
問題2 曲線(x+y)²=4xとx軸で囲まれた部分の面積を求めよ。
【解】
(x+y)²=4xだから
y≧0の部分は、y=2√x–xだから、
(解答終)
問題2を解くのに2次曲線の知識は必要としないけれど、
となるので、a=b=c=1となり、2次曲線の判別式を使うと、
となり、この曲線が放物線であることが分かる。
このことは、この曲線を原点まわりに−45°回転すると、変換式は
となるので、これを(x+y)²=4x代入すると、
ここで、さらに
とすると、
となることからも確かめられる。
tan⁻¹{tan(9π/4)}の答え [数学基礎]
問題 次の値を求めよ
【答】 π/4(=45°)
皆さん、正しく答えられたでしょうか(^^)
ウソじゃないケロよ、電卓で計算してもこうなるケロ。
9π/4と答えたヒトは間違いですから注意するにゃ。
sin⁻¹やcos⁻¹、tan⁻¹などには逆三角関数という名称がついているけれど、これらの関数は厳密に(写像的な観点から)言うと逆関数じゃないので注意。似て非なるものです。
参考までに、三角関数のグラフ。
たとえば、y=tan xの場合、定義域を−π/2<x<π/2といった制限を加えないと、1対1対応にならず、y=tanxの逆関数としてのtan⁻¹y=xは定義できないのであった。
この表現は誤解を招くかもしれないので、こう言い換えるべきだ。
tan⁻¹y=x (−∞<y<∞,−π/2<x<π/2)は、y=tan x (−π/2<x<π/2, −∞<y<∞)の逆関数ではあるが、
y=tan x (−∞<x<∞,−∞<y<∞)の逆関数ではないと。
お前らに、逆写像の簡単な問題の答を問うにゃ [数学基礎]
つかぬことをお伺いしますが、
または
の値はいくつだケロ?
tan⁻¹やatanはtanの逆関数。つまり、
である。
――この定義は少し不正確!! あえてぼかす!!!!――
たとえば、x=π/4(=45°)のとき
である。
逆関数をわからないヒトもいるかもしれない。
逆関数とは、集合Xから集合Yへの写像(関数)fが1対1への対応(全単射)であるとき、と定義されるもの。
たとえば、X={ネコ,イヌ,ネズミ}、Y={チーズ,マタタビ,ホネ}で次の対応規則f
があるとき、その逆関数、逆写像f⁻¹は
と定義される。
1対1対応だから、集合Xの要素の個数と集合Yの要素の個数は等しい。
であるとき、8∈Yに対応する要素がXに無いので、XからYへの写像fの逆写像f⁻¹は定義されない。
もう一度、問うにゃ。
問題 次の値を求めよ
おそらく、多くのヒトが・・・(^^)
オイラーの公式 [数学基礎]
オイラーの公式
オイラーの公式とは、指数関数と三角関数を結びつける次の公式。
jは虚数単位。
横軸を実軸、縦軸を虚軸にとるガウス平面上において、(1)式は 原点Oを中心とする半径1の円周(上の点)をあらわす。
(1)式に−θを代入すると、
(1)に(2)を加えると、
(1)を(2)で引くと、
である。
したがって、三角関数は複素数・虚数まで拡張された指数関数で定義することが可能。
また、θ=πを(1)式に代入すると、
虚数単位j、円周率π、ネイピア数e、そして、数学で最も基本的な1、0という数が1つの式で結びつく。
この式に数学の神秘(?)を見出す人もいる。
だからというわけではないでしょうが、この式が好きだという結構いるようですね。番外編 不等式の証明 [数学基礎]
番外編 不等式の証明
いきなり、
これは次のように変形できるので、増加関数であることがわかる。
問題1 a、bが実数であるとき、次の不等式を証明せよ。
【証明】
よって、
である。
等号成立は、a=0またはb=0。
(証明終わり)こんな計算はしたくない。
そこで、ずるをするにゃ。が増加関数であることを使って、証明することにする。
【ずるい証明】
は増加関数。
|a|+|b|≧|a+b}だからまた、
①、②より
である。
(証明終わり)
問題2 なるとき、との大小関係を調べよ。ただし、p>0、q>0、p+q=1とする。
しかし、面倒な計算はしたくないので、これから、ずるをするにゃ。
1年ほど前に、微分積分で凸関数というものをやった。凸関数は次のようなもの。
y=f(x)上の相異なる任意の2点をA(x,f(x))、B(y,f(y))とすると、この2点を結ぶ線分(弦)ABがこの曲線の弧ABよりも上にあるものを凸関数という。f(x)=ax²+bx+c(a>0)のときは、凸関数。で、p>0、q>0、p+q=1のとき、px+qyというのは、x軸上の(x,0)と(y,0)をq:pで分けた点と考えることができる。また、とすると、この点は線分ABをq;pに分ける点と考えられる。
Dは線分AB上にあるので、曲線上のよりも上にある。
したがって、a>0のとき、面倒くさい計算をするまでもなく、になる。a<0のときは、上下が逆転し、弦ABが線分ABの上に来るので、
2次関数の図形的な意味を考えれば、計算をすることなく、大小関係を判定できるという話。
この問題の出題者は、このことを念頭にこの問題を作ったのだから、ケチをつけられる筋合いはない。
また、
といった関数fは凹(上に凸)関数だから、
p>0、q>0、p+q=1のとき
となるので、
という不等式が得られる。
等号成立は、いずれの場合もa=b。さり気なく、α≧0、β≧0とし,p=1/3、q=2/3とすると
ここで、さらにさり気なくb≧0、c≧0とし
さらに、もっとさり気なくa≧0、、α=a、β=(b+c)/2とし、この結果を⑨に放り込むと
ここで、さらにもっと大胆に、a=x²、b=y²、c=z²とすると
(1) との大小を比較せよ。
(2) a≧3のとき、x+y+z=x²+y²+z²=aを満たすx、y、zの値を求めよ。(1)の不等式がどこから出てきたのかが、よく、わかる。これは関数の凸凹と深い関係があるんだケロ。
そして、
といった不等式も同様に得ることができる。
【解】
(1) x+y+z<0のときx+y+z≧0のとき
よって、
(2) (1)より
また、x+y+z=x²+y²+z²=a≧3
よって、a=3
また、a=3のとき①の右辺=左辺=1となり、x=y=zでなければならない。よって、x=y=z=1である。