[線形代数ってなにさ?_3] [線形代数の基礎]
[線形代数ってなにさ?_3]
3.線形写像の行列表現
基底の準備が整うと、線形写像の具体的な計算が可能になります(具体的といってもけっこう抽象的ですが(^^;))。やっつけちゃいましょう!(^^)。
と、その前に、線形写像とは何だったか?を思い出します。[線形代数ってなにさ?_1]で述べたように、線形写像は1次元の一次関数f(x)=axの高次元への一般化でした。ところがここでもまた障害になるのが、[線形代数ってなにさ?_1]の冒頭のベクトル空間の[定義-1]で、座標表現をあきらめてしまった事です。いきなり位置ベクトルに作用する行列を持ち出せないんですよ。そこでまた行列を、「一から手造りする」破目へと陥ります(^^;)。でも根っこは常に、位置ベクトルイメージであり行列イメージですからね。
普通の1次元の一次関数f(x)=axは、次の関数方程式の解です。
(1)を実際に解いた経験のある方なら知ってるはずですが、その途中で、
を導けます。(1)と(2)を合わせて、
Rを実数全体の集合,f:R→Rとして、次の条件を満たすものを一次関数と言う。
(L1) f(x+y)=f(x)+f(y)
(L2) f(λx)=λf(x)
を定義にしとくと、f(x)=axにいたる過程は多少楽になります。ところでAを行列、x,yを位置ベクトルとすると明らかに、
(L1) A(x+y)=Ax+Ay
(L2) A(λx)=λAx
が成り立ちます。それでこれは行けるぜ!という話になりました。さぁこっからはスカラーはギリシャ文字、ベクトルはアルファベットです。
[定義-5]
VnとVmをn次元とm次元のベクトル空間,f:Vn→Vmとして、次の条件を満たすものを線形写像と言う。x,y∈Vnとして、
(L1) f(x+y)=f(x)+f(y)
(L2) f(λx)=λf(x)
fがf:Vn→Vmなのは、xがベクトルでAxもベクトルだからです。f(x)やf(y)は当然、f(x),f(y)∈Vmという事になります。
x∈VnをVnの基底{v1,v2,・・・,vn}で、基底表現します。
これに[定義-5]の線形写像を作用させます。
(L1)を使います。
(L2)を使います。
ここでλ1,λ2,・・・,λnはxの基底表現(3)の係数なので、xを具体的に決めれば全て既知です。よって(4)は次のように言ってます。
・線形写像は、定義域の基底ベクトルに関する値さえ決めてしまえば、完全に決まる。
値域のベクトル空間Vmにも基底{w1,w2,・・・,wm}があります。f(v1), f(v2),・・・,f(vn)∈Vmです。従って、
と表せます。ここで式の文字数が多くて面倒臭いという理由で、卑怯にもまだ使えないはずの行列記法を流用するんですよ。上記をこう略記するのだぁ~!、とか言いながら(^^;)。
(5)の(μji)はまだ未定です。未定ですがこれらは、線形写像fの具体的な挙動から決めるべきものです。逆に言えば、行列(μji)で線形写像fが完全に決まる事になります。この行列(μji)の事を、線形写像fの表現行列と言います。
ちなみに(5)の形を超行列とか超ベクトルとか呼ぶ人がいますけれど、自分の意見では全く無意味な用語ですからね。確かにベクトルが位置ベクトル形式に並んでるので、何らかの用語を当てたくなる気持ちはわかりますが、「面倒臭いから行列記法を流用しただけ」です。でもそのおかげですっきりし、行列表現が得られます。
ところで行列(μji)の行番号と列番号の並びが、通常とは逆なのにお気づきでしょうか(転置状態)。これはわざとです。理由はすぐわかります。At=(μji)とします。Atはn×m行列です。
(4)も行列記法で略記し、(6)を代入します。
f(x)は、f(x)∈Vmです。f(x)にも{w1,w2,・・・,wm}による基底表現があります。
転置を取って、
移項すれば、
が得られます。b=(ηi),a=(λj)とします。{w1,w2,・・・,wm}は基底で独立でした。よって(9)が成り立つためには、b-Aa=0すなわち、
が必要となります。Aはm×n行列です。a=(λj)はベクトルxの基底表現の係数でした。基底とは座標軸でした。従ってaは座標軸{v1,v2,・・・,vn}に関する座標とみなせます。b=(ηi)も座標軸{w1,w2,・・・,wm}に関する座標とみなせます。よって、
とは、線形写像fによる座標変換式です(一次変換)。こうしてやっと座標表現は復活します(^^)。
ここまでの過程は、ある重要な含みを持っています。どんなに妙チクリンに見えようとベクトルに基底表現ある限り、どんなベクトルも最終的には位置ベクトルの計算に具体的に持ち込める、という重要な事実です。位置ベクトルだったら計算できます。たとえ関数空間であろうとも(^^)。
ベクトルxの{v1,v2,・・・,vn}に関する基底表現の係数を、位置ベクトル形式(λj)にまとめたものを、ベクトルxの基底{v1,v2,・・・,vn}に関する表現ベクトルと呼びます。
位置ベクトルの事は今後、数ベクトルと呼びます。数ベクトル空間の最も明解な基底、
は自然基底です。
線形写像fと表現行列Aは同じなのがわかりました。ところで行列に必要な基本演算は、和,スカラー倍,積です。fは関数(写像)なので和とスカラー倍は、関数の和とスカラー倍に対応します。
上記は、写像の和とスカラー倍の定義にまで遡って(6)~(10)の手続きで導けますが、まっ当然ですよね?。積についてはBAxは、xにAを作用させてからBを作用させるなので、写像の合成に対応します。
行列の基本演算を証明(?)したので、もう行列の使用は解禁しようと思います(^^)。
(執筆ddt³さん)
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