境界要素法入門5 [境界要素法]
境界要素法入門5
[境界要素法-3]
境界要素法の内点方程式。
は解析領域R上の積分,はRの境界C上の線積分,φはΔφ=g(x,y)を満たす未知関数です。qとはφとの外法線微分値。はδをデルタ関数として、
を満たし、
を取れます。
以上が出発点です。
φ(ξ,η)は、
の積分結果なのでした。(ξ,η)を積分領域Rの内部に置いた場合(内点とした場合)、(1)が得られますが、解けない形でした。(ξ,η)を積分領域Rの外部に置いた場合(外点とした場合)は、
となり離散化すれば解けますが、不評なのでした。とすればもう後できる事は、(ξ,η)をRの境界Cに置く(境界点とする)しかないじゃないですか(^^;)。
デルタ関数δ(ξ,η)を境界上で考えRで積分する場合、の再評価が必要になります。評価結果は簡単ですが、ここでたいてい怪しげな計算が登場し(コーシーの主値積分)、一部の理論家からは酷評される事になります。デルタ関数の数学的に厳密な定義にまで遡って再評価するなんて、やってられないですもんね(^^;)。そこでここでは、どうせいい加減になるならばという事で、の再評価にデルタ関数の等方性を使います。
デルタ関数δ(ξ,η)って、特異点(ξ,η)を中心に等方的ですよね?(本当は関数じゃないけど)。だって(x,y)≠(ξ,η)ではδ=0で、(x,y)=(ξ,η)ではδ=∞なんですから、これを等方的と言わずして何と言う?です(^^)。
次に(x,y)≠(ξ,η)ではδ=0ですから、(ξ,η)を内点として含む限りどんな積分領域を取っても、積分結果は同じです。なので特に積分領域として、(ξ,η)を中心とした半径εの円を取れます。(ξ,η)を中心とした円は、(ξ,η)を中心に等方的です。
等方的な関数を等方的な領域で積分したら、どうなりますか?。例えばを、(ξ,η)を中心とした円で積分したら。もしになったとしたら、半円での積分値は1/2ですよね?。1/4の扇型に積分領域を制限したら、明らかに積分値は1/4ですよね?。
δ(ξ,η)を境界上に置いた場合、半径εの円が十分小さければ(ξ,η)の近傍で、積分領域Rの境界Cはふつう直線とみなせます。半径εの円は、その直線によって半分だけRに引っかかります。よって、
です。εがいくら小さくても直線とみなせないケースもあります。(ξ,η)がCの角点になるケースです。この時は角の内角をkとすれば明らかに、
です。従って、
です。デルタ関数はこういう事が、普通の関数と同じく実用的に出来るように、非常に注意深く造られたものです(^^)。
前回やったように(1)を離散化します。結果は、
でした。ここでは具体的な数値で与えられます。iは特異点番号,jは節点番号です。
いま特異点は境界上にあるので、iはどれかのjと一致します。一致するj=iの内角をとすると、(4)左辺のは、におきかわる事になります。i=1,2,・・・を考慮して行列記法で書けば、
です。iが角でない場合なので
はクロネッカーのデルタ、すなわち、
です。
(5)の未知数も境界未知量のみなので、これも境界方程式と呼ばれます。(5)を解いて境界上のφ,qを定め(1)を併用するのが、境界要素法の直接法です。
(5)から明らかなように、直接法では自動的に未知数の数に等しい条件数が得られます。また(5)の理論的誤差は、境界Cを折れ線近似した境界要素の長さと近似関数で決まるので、誤差評価も容易になります。
こうしてユーザーにはよりわかりやすく(← ホントか?(^^;))、理論家達も満足する定式化が得られました。
しかし代償もあります。基本解
はr=0に特異性を持ちます。間接法の場合、の特異点(ξ,η)は積分領域Rの外部にあるので、(1)右辺の積分は普通に行えます。直接法の場合(ξ,η)は境界上にあるので、r=0を含む特異積分を処理する必要に迫られます。
の特異性はlog(r)のオーダーなので可積です。の特異性はアークタンジェントの計算に帰着できます。ただしそのような計算はコンピューターには出来ないので、特異点を持つ境界要素の積分では、人間の指示で場合分けし、解析的積分公式をプログラムに書いてやるか、特殊要素を用いる事になります。
でもやれば、何とかなりますよ(^^)。
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