数列の極限の補足 [微分]
数列の極限の補足
のイプシロン・デルタ論法の定義は次のとおり。
任意のε>0に対して、ある自然mがあって、n>mを満たす任意の自然数nで
であることである。
論理記号を用いて書くと
ここで、Nは自然数すべての集まりを表す。
∀は全称記号と呼ばれるもので「任意の❍に対して」あるいは「すべての❍に対して」の意味で、∃は存在記号で「❍が存在する」くらいの意味である。
一般項が次式で表される数列があるとする。
この数列の極限がであることはすぐにわかるだろう。
このことをイプシロン・デルタ論法(イプシロン・N論法)で証明するには次のようにすればよいだろう。
任意のε>0に対して
よって、(1)式の自然数mは、ガウス記号を用いて
にとれば
が満たされる。
もちろん、
であっても構わない。要は(2)式を満たすmでさえればよい。
例えば、ε=0.1=1/10ならば、m=10にとれば、n>mを満たすすべてのnに対して(2)式を満たす。m=11であっても、m=100であってもよく、これはそもそも1つ値に定まるものではない。
ここでガウス記号[x]は、xを越さない最小の整数で、
である整数nのことである。
ところで、一般項が
で表される数列があるとする。このとき、である。
先ほどと同じように、ε=1/10としたときのmを求めると
より、m=20にとればよい。
これからわかるように、同一のεの値であっても、一般に、数列によってmは異なる。
さてさて、
の証明は、任意のε>0に対して
である。
この証明で、なぜ、m=max{m₁,m₂}が必要かというと、先の例のように、同一のεであっても、数列によってmの値が異なるためで、εに対して①と②を同時に満たすmをあらたに採用しないと③が成立しないため。
上の例の場合、m₁=10、m₂=20だからm=max{10,20}=20となり、n>20>10であるすべてのnについて
と、自動的に満たすことになる。
だから、m=max{m₁,m₂}というお呪いが必要というわけ。
では、任意のε>0に対して、あるmがあって
という証明は間違いかというと、一概に、そうとも言えない。①、②式のm₁,m₂がそれぞれ1つの値として定まるものではなく、また、mをm≧max{m₁,m₂}にとれば成り立つから。ただ、初学者に無用な混乱を与えるので、不親切な証明とされていて、このお呪いを唱えたほうがよいとされている。
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