近傍って何だ? [ひとこと言わねば]
最近、ねこ騙し数学の数学の記事によく出てくる近傍って、そもそも、なんだ?
x、aを実数R内の点とする。ある正の実数ε>0があり、
をaのε近傍、あるいは単にaの近傍といい、記号,などであらわす。
関数の極限では、aのε近傍から点aを除いた穴あき近傍
が使われる。
近傍は集合だから、
と書くのは間違い。集合と集合の要素の引き算は認められないから、建前論的にいうと間違いということになるので、この点は注意してください。
今回やっている一連の記事を書くにあたってに、最初に、この定義を与えるのであったと、後悔している。この用語を定義しなかったために、いま、大変な事になってしまっている。
でも、ちょっとだけ言い訳をすると、2変数関数の偏微分をする前に、開集合や閉集合などの定義を与えなければいけないので、「そのときにまとめてやればいい」と考えていた。だから、省いた。
今回の1変数関数の極限、連続、微分の記事は、そもそも、偏微分の記事を書くためのイントロで、必要最低限の話しかするつもりはなかった。こんなに長く書くつもりはなかった。
当初の予想外の進展だから、このような事態に陥ったのはしょうがない。
なお、数学の教科書によっては、集合Aと集合Bの差、差集合A–B を、という記号で表しているものもあるので、この表記に従えば、点aの穴あき近傍の表記は
となる。
で、微分積分で点aの近傍と言ったら、「εが十分に小さい正の数の開区間(a–ε,a+ε) 」の意味。
ε=1、ε=2と言った大きな数のものではないので、この点も注意して欲しい。
「点aで連続な関数f(x)がf(a)>0であるならば、その近傍でf(x)>0である」といった定理を紹介した。
たとえば、
という関数があるとする。
a=1/2とすると、f(1/2)=3/4>0。
そして、ε=1としたときの点a=1/2のε近傍は(−1/2,1/2)だから、このとき、−5/4<f(x)<3/4となり、上の定理は成立しない。
だから、上の定理は、ε=1といったような大きな数の場合の話ではない。
この関数の場合、f(x)>0になるxの解は0<x<2だから、
に収まるように、0<ε<1/2を満たすεを採用しないと、上の定理は成立しない。
そもそも、 「その(点aの)近傍でf(x)>0である」の意味は、
である正の数εが少なくとも1つある、という意味だからね〜。このことを近傍という言葉を使って簡略に表現しているだけ。
しかも、このεは関数f(x)とaによって変わるし、そもそも、1つの値として定まるものでもないし・・・。
上の例の場合だと、0<ε<1/2であるどの数のεをとった点aの近傍でもいいから、それこそ、この近傍は無数に存在する。
混乱させるだけだから、これ以上の話はやめよう。
ここは、点aのε近傍のεとは、十分に小さい「ある正の数」であるということだ、と誤魔化すことにしよう。
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