第34回 定積分


 


§1 積分の定義


 


f(x)は有界な閉区間[a,b]で定義されている有界な関数である。


分割


  


に対し、次の和(リーマン和)を考える。


  


任意の分割Δに関して、であるの選び方によらず、


  


となる実数Sが存在するとき、f(x)[a,b]で(リーマン)積分可能であるといい、


  


で表す。


すなわち、


  


ここで、の最大値で、分割の幅である。


 


また、


a<bのとき、


  


と定義する。


さらに、a=bのとき、すなわち、


  


と定義する。


 


例1 cを定数とするとき、


  


は、[a,b]で積分可能で、


  


何故ならば、


  


である全ての分割に関して、であるの選び方に関わらず、


  


 


例2 [a,b]で積分可能で、


  


である。


任意の分割Δに関して、


    


に取ると、


  


また、任意のに対して、


  


したがって、


  


 


例3 a<c<bとし、


  


とすると、f(x)[a,b]で積分可能で、


  


分割


  


で、点cを含む区間の数が最も多くなるのは、となる自然数kが存在するときで、このとき、


任意のに対して、


  


 


例4


  


は、[a,b]で(リーマン)積分可能でない。


何故ならば、に無理数の点をとれば、


  


有理数の点をとれば、


  


となるので。


 


 


§2 定積分の基本的な性質


 


定理1 有界閉区間I=[a,b]上でf(x)g(x)は積分可能で、λμを定数とするとき、I上で積分可能で


  


【証明】


分割Δを任意にとると、


  


したがって、I上で積分可能で、


  


(証明終)


 


定理2 関数f(x)g(x)I=[a,b]上で積分可能とする。


  


ならば、


  


特に、


  


【証明】


Iの分割Δを任意にとると、仮定より


  


したがって、


  


Δ|→0とすると、


  


(証明終)


 


(注) 例2から、


  


は、一般に成り立たないことがわかる。


 


次の2つの定理の証明は、すこし、厄介なので、定理だけをあげる。


 


定理3 f(x)[a,b]で積分可能ならば、


  


 


定理4 f(x)[a,b]で単調または連続であれば、f(x)[a,b]で積分可能である。


 


定理5 f(x)g(x)[a,b]で連続ならば、


  


は、[a,b]で積分可能である。


【略証】


f(x)g(x)[a,b]で連続ならば、[a,b]で連続。したがって、定理4より、積分可能である。


(略証終)


 


 


問1 f(x)g(x)[a,b]で連続な関数とする。


このとき、


  


[a,b]で積分可能であることを示せ。


【解】


  


f(x)g(x)[a,b]で連続だから、[a,b]で連続。


したがって、[a,b]で積分可能である。


(解答終)


 


定理6


f(x)[a,b]で連続とする。任意のx∈[a,b]についてf(x)≧0、かつ、ならば、f(x)≡0である。


【証明】


f(c)>0であるca<c<bに存在すると、f(x)は連続なので、十分ちいさなδ>0を選ぶと、


  


とすることができる。


  


となり矛盾。


よって、f(x)≡0


(証明終)


 


問2 f(x)g(x)[a,b]で連続である。[a,b]f(x)≧g(x)かつならば、f=gであることを示せ。


【解」


h(x)=f(x)−g(x)とおくと、h(x)[a,b]で連続なので、h(x)[a,b]で積分可能。


また、[a,b]h(x)≧0で、かつ、


  


したがって、定理6よりh(x)[a,b]で恒等的にh(x)=0


ゆえに、f=g


(解答終)


 


 


定理7(積分の三角不等式)


f(x)[a,b]で連続ならば、


  


【証明】


f(x)[a,b]で連続なので、f(x)と|f(x)|は[a,b]で積分可能。


分割Δを任意に取ると、


  


したがって、


  


(証明終)


 


【別証」


  


だから


  


(別証終)