第23回 関数の近似式


 


§1 1次の近似式


 


関数f(x)が点aで微分可能ならば、(a,f(a))における接線は


  


であり、点xaの近くであれば、f(x)の値は


  


と近似することができる。


したがって、x−a=hとおくと、x=a+hだから、|h|が十分小さいとき


  


が成り立ち、(1)の右辺を1次の近似式という。


 


f(x)が2回微分可能ならば、拡張された平均値の定理(第16回の定理6)より、


  


となるので、f(a+h)を(1)式で近似した誤差は次のように評価することができる。


  


 


特に、(1)において、a=0h=xとおけば、次の近似式を得る。


  


この近似式(2)の誤差は


  


であるが、|x|が十分に小さいので、おおよそ


  


の程度である。


 


例 とすると、


  


だから、②式より


  


特に、α=−1α=1/2とすると、


  


 


問1 次の近似を求めよ。



【解】



(解答終)


 


問2 の近似値を求めよ。また、その近似値はどの程度の誤差を含むか評価せよ。


【解】


32²=1024だから、


  


また、


  


とおくと、


  


よって、誤差は


  


の程度で、小数点4桁目を切り上げて、0.003


したがって、


  


(解答終)


 


だから、近似値は、誤差0.003の範囲に収まっていることがわかる。


 


 


 


 


問3 kの絶対値が十分小さいとき、(x−1)(x−2)(x−3)=kは、それぞれ、123に近い実数解をもつ。このことを既知として3つの実数解の近似値をhの1次式として表わせ。


【解】


  


とする。


1に近い解をα=1+hとすると、


  


h|≪1なので、hの2次以上の項を無視すると、


  


2に近い解をβ=2+hとすると、同様に


  


3に近い解をγ=3+hとすると、


  


したがって、


  


(解答終)


 


【別解】


  


とおくと、


  


1の近い解を1+hとすると、


  


1+hf(x)=0の解なのでf(1+h)=0


よって、


  


2に近い解を2+hとすると、


  


2+hf(x)=0の解なのでf(2+h)=0


よって、


  


3の近い解を3+hとすると、


  


3+hf(x)=0の解なのでf(3+h)=0


よって、


  


したがって、


  


(解答終)


 


h=1/10のとき、上の方程式の解(の近似値)は1.05441.89903.0467なので、上で求めた解の近似解とよく一致していることがわかる。


 

 


§2 2次の近似式


 


関数f(x)x=aで2回微分が可能であるとし、点P(a,f(a))で共通の接線を有し、さらに2次微分係数f''(a)が等しい放物線を


  


とおくと


  


x=af(a)=g(a)f'(a)=g'(a)f''(a)=g''(a)であるから


  


したがって


  


Pの近くでは、g(x)f(x)に近接しているから、x≒aでは


  


とみなすことが可能で、x=a+hとおけば


  


という2次の近似式が得られる。


 


また、(4)式は、


拡張された平均値の定理より


  


h|が十分に小さいとき


  


なので、


  


と導くこともできる。


 


(4)式から(1)の誤差がほぼ程度であることが分かる。


 


また、(4)式においてa=0x=hととおけば、次の2次の近似式を得る。


  




とすれば、


  


だから、


  


α=−1α=1/2のとき


  


という2次の近似式を得ることができる。


 


問4 xが3に近いとき、次の式の近似式を求めよ。


  


【解】


  


とおくと、


  


ゆえに、


  


したがって、1次の近似式は


  


2次の近似式は


  


(解答終)


 


  


となるので、


  


とおくと、


  


xが3に近いとき、tは0に近いので


  


α=−1/2とおき、(6)を用いると、


  


よって、


  


と計算することもできる。


 



 


f(x)n回微分可能であるとき、


f(a+h)n次式で近似する場合、第15回の問3の結果を用いると、


  


a=0のとき、h=xとおくと、


  


下の図は、y=sinxを1次、3次、5次式で近似したものだが、一般に近似式の次数を高くすれば高くするほど、近似式とよく一致するようになる。