便利だが超〜危険な定理


 


このブログ、「ねこ騙し数学」は、原則として、極限計算でロピタルの定理を使わない、つまり、反ロピタルの定理の方針を貫いている。


古くからこのブログの数学の記事を読んでいるヒトは、このことをよく知っていると思う。


 


そこで、大学の微分積分などの解析で使われている、何を書いているかわからなくて、ロピタルの定理以上に危険な定理を紹介することにする。


 


定理 次の2つは同値である。


(1) 集合Fは閉集合である


(2) 点列が収束するならば、その極限は集合Fに必ず属する。


 


この定理があまりに危険なためなのだろうか、


洲之内治男の「ルベーグ積分入門」(内田古鶴圃)には、この定理を紹介すると同時に次のような注意書きがついている。


 



【注意】 この定理の(2)⇒(1)は、解析学で集合が閉集合であることを示すのに用いられる。ところで、(この)定理は、Fの任意の点列がFの中に極限をもつといっているのではない。ただ単に、Fの点列が極限をもつならば、その極限は必ずFの中に入るに行っているに過ぎない。



 


そして、この注意書きのあとに、この定理の応用として、次の例が紹介されている。


 



例 閉集合[a,b]が閉集合であることをこの定理を用いて証明してみよう。


それには、ならば、x∈[a,b]であることを示せばよい。


より、である。



とすると、極限の性質より、a≦x≦bは明らか(であり、x∈[a,b]。よって[a,b]は閉集合である)。



 


この例の証明を読んで納得できるヒトは、いったい、どれくらいいるのだろうか(^^


 


この例を真似れば、A=[a,b]×[c,d]、すなわち、


  


が閉集合であることの証明は次のようになるのであろう。


 


【証明(・・?


それには、ならば、(x,y)∈Aであることを示せばよい。


であるから、


  


である。


  


とすると、極限の性質より、


  


は明らかであり、(x,y)∈[a,b]×[c,d]


よって、A=[a,b]×[c,d]は閉集合である。


(証明(・・?終)


 


2次元ユークリッド空間の場合、


をその点列、その元、さらに、この点列の極限(点)をP=(x,y)とする。


このとき、


  


が成立するから、うるさいことをいわなければ、上のヤツで証明になっているんじゃ〜ないか。


 


何故かって、Pに収束するとき、


任意の正数ε>0に対し、ある自然数mがあって、


  


が成立し、


逆にのとき、任意のε>0に対し、ある自然数mがあって、n≧mならば、


  


が成立するので、任意のε>0に対して、


  


が成立するからだよ。


 


 


ここで、お前らに問題。


 


確認問題1


A=(−1,1)とし、一般項が


  


である点列(数列)を考える。


すると、この点列の極限値は00∈A


すると、定理よりAは閉集合となるが、A=(−1,1)は開集合となり、矛盾する。


これは、紹介した定理に反する。


どこがいけないのか、説明せよ。


 


確認問題2


  


さて、集合Mは閉集合か。閉集合であればその証明をし、閉集合でなければ、反例をあげよ。


  


集合Lは閉集合か。


 


この確認問題に答えられないとしたら、そのヒトは、この定理を理解できていないので、この超〜危険な定理は使うべきではない。


 


発展問題


fを実数全体の集合R上の連続関数とする。このとき、集合


  


が閉集合であることを示せ。