第58回 ベクトル関数の微分


 


 


実数全体の集合の部分集合Dで定義されているベクトル関数A(t)t₀∈Dにおいて極限


  


を有するとき、A(t)t=t₀で微分可能であるといい、A'(t₀)t=t₀におけるA(t)微分係数という。


Δt=t−t₀≠0とおくと、t→t₀のときΔt→0だから、(1)式は次のように書き換えることができる。


  


また、Dに属する任意の点でA(t)が微分可能であるとき、A(t)Dで微分可能であるという。


 


ベクトル関数A(t)Dの任意の点tで微分可能であるとき、


  


A(t)の導関数といい、記号


  


などで表す。


また、


  


であるとき、


  


 


 


定理 A(t)が点t=t₀で微分可能ならば、A(t)は点t=t₀で連続である。


【略証】



(略証終)


 


問1 次のことを示せ。



【略証】



(略証終)


 


 


問2 実関数f(t)とベクトル関数A(t)Dで微分可能であるとするとき、次のことが成り立つことを示せ。



【解】



(解答終)


 


A(t)は微分可能だから連続で、


  


であることに注意。


 


 


問3 問1、問2を用いて、


  


のとき、


 


となることを示せ。


【解】


  


(解答終)


 


基本ベクトルは大きさ、方向が変わらない定ベクトルなので、


 


であることを使っていることに留意。


 


ベクトル関数の内積(スカラー積)、外積(ベクトル積)に関しては、次の関係が成り立つ。


 


定理



【証明】


とする。


(1) の両辺を微分すると、


  


(2)


  


だから、


  


(証明終)


 


 


問4 次のことを示せ。


 


【解】


(1)


  


 


(2) |A|=定数だから


よって、


  


したがって、ならばは直交する。


 


(3)


  


(解答終)


 


rを質点の位置ベクトル、mを質量とすると、問4の(3)より


  


ここで、


  


とおくと、


  


Lは角運動量であり、r×Fはモーメントだから、「角運動量の単位時間の変化はモーメントに等しい」という物理の角運動量保存の法則を得ることができる。


 


 


問5 rtのベクトル関数、r=r|とするとき、次の関数を微分せよ。



(答)



ここで、


  


 


 


問6 abを一定のベクトル、ωを定数とするとき、次のことを示せ。


ならば、


  


【略解】


  


また、


  


(略解終)