第57回 ベクトル関数の極限と連続


 


 


実数全体の集合Rの空でない部分集合の任意の点tに対して、ベクトルAが一意に対応付けられているとき、これをベクトル関数と呼び、A(t)で表す。


直交座標を用いると、A(t)DからRへの3つの実数関数x(t)y(t)z(t)によって次のように表すことができる。


  


ここで、ijkはそれぞれx軸、y軸、z軸の正の方向の単位ベクトル、すなわち、


  


である。


また、tの値によってベクトルの大きさ、方向が変わらないベクトルを定ベクトルという。


 


ベクトル関数の極限


 


tt₀に限りなく近づくとき、A(t)Cに限りなく近づくならば、Ct=t₀におけるA(t)の極限値といい、


  


で表す。


 


より正確にε−δ論法を用いると、


任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0が存在し、任意のt∈Dに対して


  


であるとき、このことを


  


であらわし、t=t₀においてA(t)Cに収束するという。また、このとき、Ct=t₀におけるA(t)の極限値という。


 


問1 とするとき、が同等であることを示せ。


すなわち、


  


【略証】


  


だから


  


したがって、


  


ならば、ハサミ打ちの定理より


  


逆に、ならば


  


なので、ハサミ打ちの定理より


  


(略証終)


 


問2 αβを定数とするとき、次のことが成り立つことを示せ。


  


【略証】


とする。


α=β=0のとき、だから、あきらか。


同時にα=0β=0でないとき、


任意の正数ε>0に対して


  


とおくと、あるδ>0があって、


  


とすることができる。


したがって、このとき、


  


(証明終)


 


 


問3 f(t)を実数全体の集合RからRへの関数とするとき、次のことを示せ。



【略証】


問1より


  


(解答終)


 


 


ベクトル関数の連続


 


であるとき、A(t)t=t₀で連続であるという。


すなわち、


任意の正数ε>0に対して、ある正数δ>0が存在し、全てのt∈Dに関して


  


であるとき、A(t)t=t₀で連続であるという。


また、Dに属する任意の点でA(t)が連続であるとき、A(t)Dで連続であるという。


 


ベクトル値関数A(t)


  


であるとき、A(t)t=t₀で連続であることと、実関数x(t)y(t)z(t)t=t₀で連続であることは同値である。


 


問4 上のことぉ証明せよ。