第52回 関数列とその収束


 


 


自然数n=1,2,3,・・・に対し


  


と関数を定めると、1つの関数の列、関数列が定まる。


任意の点x∈[0,1]から一つ選び、その値を固定すると


  


そこで、


  


とすると、


  


と表すことができる。


 


定義 (各点収束)


関数列と関数f(x)に対して、任意の点x∈Iを固定したときが収束し、


  


であるとき、関数f(x)を関数列極限関数といい、関数列はI各点収束するという。また、Iを関数列の収束域という。


 


イプシロン・デルタ論法で表わせば、


任意の正数ε>0任意のx∈Iとに対して、ある自然数N(x,ε)が存在して、n≧N(x,ε)を満たす任意の自然数nに関して、


  


が成り立つとき、関数f(x)を関数列の極限関数といい、関数列はIで関数f(x)に各点収束するという。


 


論理記号を用いるならば、


  


 


なお、ここで、N(x,ε)は、xεの関数の意味ではなく、xεに依存する程度の意味であることに注意。


例えば、


  


で定まる関数列の場合、


x=0x=1の場合、任意のε>0に対して、任意の自然数nで、


  


一方、0<x<1の場合、


  


中辺と右辺の対数を取ると、


  


よって、


  


を満たす自然数Nを選び、それをN(x,ε)にする必要がある。


したがって、0<x<1のとき、


任意のε>0に対し、


  


とすれば、


  


 


 


問1 次の関数列は(各点)収束するか。収束するとき、極限関数を求めよ。



【解】


(1) −1<x<1のとき、0≦x²<1だから


よって、


  


x=±1のとき、


  


x<−1x>1のとき、1<x²だから


  


したがって、各点収束し。極限関数は


  


 


 


(2) の増減を調べるために、を微分すると、


  


したがって、x=1/nのとき、極大、かつ、最大で


  


また、


  


よって、


  


だからハサミ打ちの定理より


  


よって、関数列は各点収束し、極限関数は


  


である。


 


(3) 任意の自然数nに対してなので


0<x≦1のとき、である自然数Nを選ぶと、


  


が成立するので、


したがって、極限関数f(x)


  


(解答終)


 


 


問の(1)、(2)の関数列に属する全ての関数は、定義域内で、連続、積分可能であり、微分可能である。


しかし、問の(1)の関数列の極限関数f(x)x=0x=±1で不連続で微分可能でなく、関数列の性質を引き継いでいない。


これに対し、(2)の関数列の極限関数f(x)は、定義域で、連続、積分可能であり、微分可能で、関数列の性質を受け継いでいることがわかる。


 


 


問2 とするとき、


  


は成立するか。


【解】


  


関数列の極限関数をf(x)とすると、


  


だから、


  


よって、


  


(解答終)


 


問3 とするとき、

  


は成立するか。


【解】




関数列の極限関数はだから、


  


よって、


  


 


(解答終)