第9回 全称命題と特称命題の複合命題1


 


§1 全称命題と特称命題の否定


 


全体集合UU={1,2,3}とし、


 「すべてのxは6の約数である」


という命題p(x)の否定について考える。


a(x)を「6の約数である」とすると、この命題は


 


で表され、a(x)は、x=1,2,3のときに真である。すなわち、


 


である。


したがって、この命題に否定は


 


であり、ド・モルガンの法則より


 


この右辺は、の少なくとも1つが真であることを表している。


よって、


  


である。


同様に、


 


を否定すると、


  


となることから、


  


となる。


  


条件命題a(x)の真理集合をAとすると、このことは次のように示される。


  


したがって、


 「すべてのxは・・・である」の否定は「あるxは・・・でない」


 「あるxは・・・である」の否定は「すべてのxは・・・でない」


である。


 


問1 次の命題の真偽を言え。偽の場合は、その命題を否定して真の命題にせよ。


(1) すべてのxについて、x²≧2x−2


(2) x>0を満たす任意のxをとっても、である。


(3) ある実数xに対して、である。


【解答】


(1) すべてのxについて、となるので、真。


 


(2) x=1のとき、なので、偽。


全体集合UU={x|x>0}とすると、この命題は


 


となるので、この否定は


 


したがって、「x>0を満たすあるxである」


 


(3) を満たす実数xは存在しないので、この命題は偽。


この命題の否定は


 


なので、この命題の否定は


 


よって、「すべての実数xについて、である」


(解答終)


 


 


§2 連言と選言


 


「すべてのx」、「あるx」がついた連言、選言については次の関係が成り立つ。


 


【証明】


全体集合をUa(x)b(x)の真理集合をそれぞれABとする。


 


U=A∩B⊂A、かつ、A⊂Uだから、A=U


同様に、B=U


よって、


 


したがって、


 


 


(4)については、


 


(解答終)


 


なお、次の関係は一般に成り立たないので注意。


  


 


問2 (5)、(6)は一般に成り立たない。その反例をあげよ。


【反例」


(5)については、実数全体の集合Rを全体集合とし、「xは有理数である」をa(x)、「xは無理数である」をb(x)とすると、


は真であるが、ともに偽であるからは偽。


したがって、


 


 


(6) 三角形すべての集合を全体集合とし、「xは鋭角三角形である」をa(x)、「xは鈍角三角形」をb(x)とすると、


は偽、ともに真であるのでは真である。


したがって、


 


(反例)


 


a(x)b(x)の真理集合をABとすると、




であり、




なので、(5)は一般に成立しない。


ただ、


 


は成立するので、


 


は成立する。ただし、この逆は一般に成立しない。


 


また、


 


となり、


 


は成り立つので、


 


である。ただし、この逆は一般に成立しない。


 


 


問3 次の関係が成り立つことを示せ。


 


【解】


 


(解答終)