第11回 非可算集合


 


有理数、代数的(実)数のように、自然数よりもはるかに(個)数が多そうな無限集合の濃度も可算濃度であった。したがって、無限集合の濃度はすべてに等しいのではないかと思いたくなる。


しかし、この予想は正しくない。


次に、可算濃度ではない無限集合の実例をあげることにする。


 


(1) 実数全体の集合Rは可算集合ではない


実数の部分集合R₁=x∈R0<x<1}とする。


R₁の要素xは、無限小数として、ただ一通りに表せる。


  


R₁が可算であると仮定すると、その要素は次のように自然数の番号をつけることができる。


  


ここで、上の表の対角線上の数を元に、


  


とし、


  


という実数を作る。


すると、0<b<1となり、b∈R₁である。


したがって、bは、あるに等しくならなければならないが、どのbと小数点第n位が異なっており、である。


これは矛盾である。


したがって、R₁は可算ではなく、実数全体の集合Rも可算ではない。


 


これが有名なカントールの対角線論法である。


 


問 開区間(0,1)と実数全体の集合Rは対等であることを示せ。


【解】


  


とすると、f(0,1)からRへの全単射になる。


したがって、開区間(0,1)と実数全体の集合Rは対等である。


(解答終)


 


実数全体の集合Rの濃度は


  


と表し、これを連続体の濃度という。


 


(補足)


代数的(実)数以外の実数を超越数という。


 


(2) 関数の濃度


実数全体の集合RからRへの関数全体の集合Fの濃度は、有限でも可算濃度でも連続体の濃度でもない。


【証明】


任意のx∈Rに対して実定数aに対応させる写像(関数)をfₐとおけば


  


である。


fₐ全体が作るFの部分集合をCとする。


実数afₐを対応させれば、これはRからCへの全単射(1対1対応)。したがって、CRである。よって、Fは高々可算集合ではない。


次に、FRが対等でないことを示す。


RからFへの全単射gがあると仮定する。


すると、Fの任意の要素は、Rのある要素agによる像gₐである。


ここで、任意のa∈Rに対して


  


という関数hを定義すると、h∈Fである。したがって、hはあるに等しい。つまり、任意のx∈Rに対して


  


となり、


  


である。


しかし、これは


  


と矛盾する。


よって、実数全体の集合RからRへの関数全体の集合Fと実数全体の集合Rとは対等ではない。


(証明終)


 


RからRへの関数全体の集合Fの濃度を関数の濃度という。


 


実は、


  


という関係があるのですが、たとえば、の間に濃度があるのかどうかはわからない。


というか、この間に濃度があると仮定してもよし、無しとしてもよし。


 


定理 全ての無限集合は可算である部分集合をもつ。


【略証】


集合Aが無限集合であれば、


  


と、順次、要素を取り出すことができ、


  


とすると、Bは可算集合、かつ、B⊂A


(略証終)