第10回 「すべての」と「ならば」を含む複合命題


 


数学には「a(x)ならばb(x)」という形の命題が多い。これは、条件命題ではなく、全称命題


 「すべてのxについて、a(x)ならばb(x)


または


 「すべてのxは、a(x)ならばb(x)


で、


 


の意味である。


ところで、


 


であるので、


 


となる。


a(x)b(x)の真理集合をABとすると、条件命題の真理集合はとなるので、


 


となる。


すなわち、


 


したがって、x(a(x)⇒b(x))の真偽は、真理集合の包含関係A⊂Bを調べることにことによって知ることができる。


また、このことから、


 


となる。


 


 

問1 次の命題の真偽を調べよ。


(1) x²+x<2ならばx²−x<2


(2) x²−3x+2<0ならばx²+3x+2>0


(3) x+y<1ならばx²+y²<1


【解答】


(1) x²+x<2の真理集合をAx²−x<2の真理集合をBとすると、


 


したがって、偽


 


(2) x²−3x+2<0の真理集合をAx²+3x+2>0の真理集合をBとすると、


 


よって、真である。


 


(3) x+y<1の真理集合をAx²+y²<1の真理集合をBとすると、


 


A,Bを座標平面上に書くと、下図のようになり、



よって、偽である。


(解答終)


 


 


問2 真理集合包含関係を調べて、実数xyに関する次の命題に真偽を定めよ。



【解答】


(1) y=|x|の真理集合をAy²=x²の真理集合をBとすると、


 


これを図示すると、下図のようになり、A⊂B



したがって、この命題は真である。


 


(2) (x²+y²<1)∧(x+y+1<0)の真理集合をA(x<0)∧(y<0)の真理集合をBとすると、


 


これを図示すると、下図のようになり、A⊂B



したがって、この命題は真である。


(解答終)


 


問3 ある正の数abに対してax+by>0ならば、x>0またはy>0であることを証明せよ。


【解】


 


だから、この対偶をとると、


 


すなわち、


x≦0かつy≦0ならば、全ての正数abに対してax+by≦0である


になり、これは明らか。


よって、成り立つ。


(解答終)