ボーアの水素原子モデル


 


仮説1(ボーアの量子条件)


電子はある安定な軌道の上だけを運動し、この軌道を運動するときには光を放出しない。この安定な軌道を半径aの円軌道とすれば、その角運動量の倍はプランク定数hの正の整数倍に等しい。すなわち、


  


 


仮説2(振動数条件)


上の条件で与えられる1つの安定な軌道(エネルギーE₁)から他の軌道(エネルギーE₂)に電子が移るときだけに、光の吸収、または、放出が起こり、放出または吸収される光の振動数は


  


から定められる。ただし、E₂>E₁のときは放出、E₂<E₁のときは吸収である。


 


仮説3


電子が安定な軌道にあるときはニュートン力学にしたがう。


 


水素の原子核(陽子)から電子に作用する力は、電子と陽子の電荷をそれぞれ−ee、さらに、電子の質量をmとすると、


  


である。


電子は原子核のまわりを半径aの円運動をするので、遠心力と静電引力は釣り合わなければならない。したがって、


  


が成り立つ。


また、電子のもつエネルギーE


  


(3)と(4)からvを消去すると、


  


また、量子条件(1)と力の釣り合いの式(3)からvを消去すると、


  


これを(5)に代入すると、


  


となり、nは正の整数だから、電子のもつエネルギーは飛び飛びの値になる。


この値をと書くことにすれば、


  


になる。そして、この自然数nを量子数という。


 


n>n'とし、電子が量子数nの(定常)状態から量子数n'の(定常)状態に移るとき、(2)式より


  


となる。


(9)式を波長λで表すと、


  


となる。ここで、cは光速度である。


  


とすると、


  


となり、水素スペクトルのリュードベリの公式が得られる。


のみならず、(11)式の左辺に電子の質量、電荷、などの物理量を代入し求めた値とリュードベリ定数Rが一致してしまった。


 


従来のニュートン力学や電磁気学の理論によると、水素原子核のまわりを電子が回ると、電子はその回転数に等しい振動数の電磁波を放出し、あっという間に原子核に落っこちてしまうんだよね。だから、電子は水素原子核のまわりをクルクルいつまでも回り続けることができない。電子は水素原子核のまわりをどうやら回っているらしいということはわかっていたけれど、何故、電子が、原子核に落っこちることなく、そののまわりをいつまでも回り続けられるのかがわからなかった。


そして、ボーアは、量子仮説を水素原子核をまわる電子に適用し、この謎を解決したというわけ。


しかし、ボーアは、何故、角運動量mvah/2πの自然数倍になるのかについては説明できなかった。そして、新たな謎を産んでしまった。


 


ボーアの水素原子モデルは電子の軌道が円軌道の場合にのみ適用できるものである。そこで、より一般の軌道にも対応できるように、ゾンマーフェルトによって、ボーアの量子条件は、


  


と拡張された。これをボーア・ゾンマーフェルトの量子化条件という。


ここで、は、それぞれ、一般化座標と一般化運動量である。


 


水素原子の円運動だけを考えるとき、に極座標のθをとれば、その共役な一般化運動量は角運動量mvaになるので、ボーア・ゾンマーフェルト条件は、


  


となり、ボーアの量子条件と一致する。


 


拡張したものだから、当たり前といえば当たり前の話!!