第12回 同値関係と同値類、商集合


 


§1 二項関係


集合Xについて、直積集合X×Xの各元(a,b)について、満たすか満たさないかが判定できる規則Rが与えられたとき、Rを集合X上の二項関係という。順序対(a,b)が二項関係Rを満たすことをaRbR(a,b)などで表す。また、直積集合X×Xの部分集合


  


を二項関係Rグラフという。


 


X上の二項関係Rについて、次の4つの性質を主に考察する。


 


任意のxyz∈Xに対して



 


反射律、対称律、推移律を同時に満足する二項関係を同値関係といい、反射律、推移律、反対称律を満足する二項関係を順序関係という。


 


問1 実数全体の集合をとする。上の二項関係Rを次のように定める。次の二項関係は、反射律、対称律、推移律、反対称律のどれを満足しているか。



【解】


(1) x≦xだから反射律を満たす。


1≦2のならば2≦1は成立しないので、このとき、対称律を満たさない。


x≦yかつy≦zならばx≦zが成立するので、推移律を満たす。


x≦yかつy≦xならばx=yが成立するので、反対称律を満たす。


よって、上の二項関係Rは、反射律、推移律、反対称律を満たす。


つまり、この関係は順序関係である。


 


(2) x=yとすると、



よって、反射律を満たす。


xRy、すなわち、(x−y)(x+y−1)=0のとき、



よって、対称律を満たす。



②が成立するのは、y=zまたはy=1−zのとき。


y=zを①に代入すると、



y=1−zを①に代入すると



よって、いずれにせよ、推移律を満たす。



しかし、このとき、2=−1でないので、反対称律は成立しない。


よって、この上の二項関係Rは、反射律、推移律、推移律を満たす。


この関係は同値関係である。


(解答終)


 


問1の関係「≦」は、xyの大小関係、つまり、順序に関する関係。


何故、反射律、推移律、反対称律を満たす関係を順序関係と呼ぶのか、わかってもらえるのではないだろうか。


 


§2 同値関係


 


RX上の関係とする。任意のxyz∈Xに対して




のすべてが成り立つとき、R同値関係にあるという。


 


問2 次の関係が同値関係であることを示せ。


 


ここで、は、それぞれ、整数全体の集合、実数全体の集合をあらわし、fは実数から実数への写像とする。


【解】


(1) a−a=0nの倍数なので反射律を満たす。


a−bnの倍数であるとき、ある整数mがあってa−b=nm。したがって、b−a=−nm=n(−m)となり、b−aは5の倍数。よって、対称律を満たす。


cを整数し、a−bが5の倍数、かつ、b−cが5の倍数とすると、


  


である整数lmが存在する。


  


ゆえに、a−bnの倍数、かつ、b−cnの倍数ならば、a−cnの倍数。よって、推移律を満たす。


したがって、この関係は同値関係である。


 


(2) f(a)=f(a)だから推移律を満たす。f(a)=f(b)ならばf(b)=f(a)なので対称律を満たす。


cを実数とする。f(a)=f(b)かつf(b)=f(c)ならばf(a)=f(c)なので推移律を満たす。


よって、この関係は同値関係である。


(解答終)


 


a∈Xに対して


  


aRによる同値類といい、などで表す。また、b∈C(a)を同値類C(a)代表元と言い、特に、aC(a)代表元である。


集合A上の同値関係Rが定義されているとき、任意の元a∈Xの同値類は部分集合である。同値類をすべて集めた集合を、同値関係Rによる商集合といい、記号で表す。


 


定理 RX上の同値関係とする。このとき、次のことが成り立つ。


 


 


この定理から、同値類は共通部分をもたないか、一致するかのいずれか一方である。したがって、同値類全体の集合はX直和分割を与える。この分割を同値関係RによるX類別という。


 


§3 集合の濃度


 


ABCを任意の集合とする。


集合の対等に関しては、次のことが成り立つ。


 


したがって、集合の対等〜は、同値関係。


この同値関係〜による同値類をA濃度、または、基数と呼び、記号|A|で表す。