第13回 偏微分の演習1

これまでは理論的な話ばっかりだったので、ここらで、ここまでの知識を使った偏微分の演習をやりますにゃ。

まず、おさらいとして留意するべきことを一点だけ。
偏微分するときは、xについて偏微分するときにはyを定数に、yについて偏微分するときはxを定数として、一変数の微分をする。


なぜならば、z=f(x,y)とすると、

  

で定義されているから。
x
について偏微分するときはyは一つの値に固定されていて動かない。
y
について偏微分するときはxは一つの値に固定されていて動かない。


だから、xについて偏微分するときにはyは定数、yについて偏微分するときにはxを定数として考えてよい。

ひょっとしたらすこし混乱させるかもしれないけれど、y=g(x)という一変数関数があって、これが微分可能であるとする。そして、z=xyとする。このとき、zの微分は

  

になる。これはyがxの変化とともにその値が変化するから。


対して、z=f(x,y)= xyという関数の偏導関数は

  

になる。


このことは、偏導関数の定義にしたがって実際に計算をしてみればよくわかる。
  

h→0の極限をとるまでもなく、このことから、

  

となることがわかるだろう。

何か困ったことに遭遇したら、定義に戻って考える!!



問題 次の関数の偏導関数を求めよ。


【解】
(1)は暗算でできるだろ。

  


(2)

  

として、前回やった偏微分の合成公式を使う。その前に、
  
というtanの逆関数の微分公式を思い出して欲しいにゃ。
そして、前回、言ったように、前回のタイプの合成関数の偏微分は

  

と分数風に覚えていれば簡単。

  

そして、

  

このことから、

  

となる。
もちろん、こんな公式なんか知らなくても、xで偏微分するときはyは定数、yで偏微分するときはxが定数と考えて一変数のように微分して、

  

と計算してもいいにゃ。


微分の最も基本的な公式

  

は忘れていないよな。


最低限、この公式を覚えていないと、微分の計算は出来ないからな。これだけは絶対にどんなことがあっても忘れてはいけない。
ちなみに、
  


宿題 次の偏導関数を求めよ。
  z= sin(xy)


【ヒント】

u=xyと置き

  

を使う。

ほとんどの人は暗算でできると思うけれど、念の為にヒントを書いた。


発展問題

  

のとき、

  

が成り立つことを示せ。
ただし、cは定数、fg級。

【解】
u=x+ct
とおくと、

  

下の奴はと考えれば分かるでしょ。
で、v=x–ctとすれば、

  

となるので、

  

になる。
よって、xでの2階偏微分は

  

で、v=x–ct
とおくと

  

だから、

  

このことから、もう一回tで偏微分するとき

  

になるのは分かるケロ?


⑨のところがわからなければ、
  
とおくと、

  

となるのがわかるでしょ。

以上のことから、
  

で、この問題の

  

は何かというと、波動方程式と呼ばれるもので、波を表す微分方程式なんだケロ。そして、定数cは、波の速さを表すんだにゃ。
光の波ならばcは秒速30万キロ、空気中の音ならば音速になるケロ。