「ラグランジュの未定乗数法」を使って解けという次の問題をたまたま見かけた。


しかも、答が間違っているというオマケ付き(^^


「たとえ、大学の数学の先生のものであろうと、ヒトの答を迂闊に信じてはいけない」ということを教えるために、その身を犠牲にして、わざわざ間違った答を書いたに違いない!!


 


定理 ラグランジュに未定乗数法


条件g(x,y)=0のもとで、f(x,y)が極値をとるxyの値は、


  


とおいたとき、


  


の解である。


 


問題 楕円x²+xy+y²=1/4と原点との最短距離を求めよ。


 


ラグランジュの未定乗数法を用いれば確かにこの問題は解けるのだけれど、極座標を用いると、次のように簡単に解ける。

 


【解答例】


  


とし、楕円x²+xy+y²=1/4に代入すると、


    


したがって、楕円x²+xy+y²=1/4と原点との最短距離は1/√6


(解答終)


 


1≦sin2θ≦1だから、


  


したがって、x²+xy+y²=1/4と原点との最長距離は1/√2である。


 


何もわざわざ難しく解くことはないと思うけれど、ラグランジュの未定乗数法の練習問題ということで・・・。


 


【別解】


楕円x²+xy+y²=1/4上の点P(x,y)と原点Oとの距離OPとすると、


  


OP>0だから、OPが最小のときにOP²は最小。


そこで、


  


とおき、g(x,y)=0の条件下でのf(x,y)の極値を調べる。


  


とおき、ラグランジュの未定乗数法を用いると、条件g(x,y)=0下でf(x,y)が極値をとる(x,y)は、


  


②、③が自明解(x,y)=(0,0)以外の解を持つためには、


  


でなければならない。


λ=2/3のときx=yλ=2のときx=−y


x=yとして①に代入すると、


  


このとき、


  


y=−xとして②に代入すると


  


このとき、


  


x²+xy+y²=1は有界な閉集合でf(x,y)=x²+y²は連続関数なので、最大・最小値が存在し、f(x,y)のときに極小かつ最小。


よって、楕円x²+xy+y²=1/4と原点との最短距離は1/√6


(別解終)


 



 


こんな簡単な問題でも、ラグランジュの未定乗数法を使って極値を求めるのはとにかく面倒くさいんだケロ。


 


問 x²+y²=1のとき、x²+3y²の最大、最小値を求めよ。


【解答例】


x²+y²=1だから


  


これをx²+3y²に代入すると、


  


したがって、x=0y=±1のときに最大値3x=±1y=0のとき最小値1である。


(解答例終)


 


【別解1】


x²+y²=1は単位円なので、円周上の点(x,y)


  


と表すことができる。


したがって、


  


よって、θ=π/23π/2のとき、すなわち、x=0y=±1のとき最大で最大値は3θ=0π、すなわち、x=±1y=0のとき最小で最小値は1


(別解1終)


 


【ラグランジュの未定乗数法による略解】


  


とおき、


  


②、③の自明解(x,y)=(0,0)は①を満たさないので不適。


②、③が自明解(x,y)=(0,0)以外の解を持つ条件は、


  


λ=1のとき、③よりy=0。よって、①よりx=±1


このとき、


  


λ=3のとき、②よりx=0。よって、①よりy=±1


  


x²+y²=1は有界閉集合で、f(x,y)=x²+3y²は連続関数なので、最大値、最小値をもつ。


したがって、x=0y=±1のとき、f(x,y)は極大かつ最大で、最大値は3。


x=±1y=0のとき、f(x,y)は極小かつ最小であり、最小値は1。


(解答終)


 


 


練習問題2 g(x,y)=x²+y²−1=0の条件下で、f(x,y)=xy+x+yの最大値、最小値を求めよ。


 


x²+y²=1だから、x=cosθy=sinθ0≦θ<2π)とし、


  


として解くもよし、



だから、xy+x+yにこれを代入して、最大・最小問題にして解くもよし、


対称性に注目し、u=x+yv=xyとおき、


  


として解いてもよい。


ただし、対称性に注目して解くとき、xyが実数であることから、


  


という条件がつくことを忘れてはいけない。