簡単に解けそうで、実は、簡単に解けない微分方程式


 


 


この微分方程式は、ねこ騙し数学の訪問者ならば、簡単に一般解を求めてくれるに違いない。


  


じゃぁ、上の式を少し変えて、次のようにしたらどうだろうか。


  


ところがどっこい、これがとんでもなく難しい。


嘘だと思うならば、やってみそ!!


そして、お前ら全員、すぐに討ち死にすると思うにゃ。


 


たとえば、(2)の両辺をxで微分すると、


  


となって、ますます、手に負えなくなってしまう。


ならばと、


  


と全微分方程式に書き換え、積分因子λ(x,y)を求めるために、この両辺にかけるにゃ。


  


そこで、次の条件を使う。


  


今度は、この偏微分方程式を解く羽目に陥ってしまう。


そして、絶望する(笑)


 


それもそのはず、(2)は、一見、簡単な微分方程式に見えるけれど、これはリッカチ形の微分方程式と呼ばれるもの。


そして、このタイプの微分方程式は、形がどんなに簡単に見えたって、一部の例外を除き、解くのが恐ろしく難しい。


 


不思議なもので、


  


という微分方程式を解く方が(2)を解くよりもずっと難しいように思うだろうが、実際は(3)はベルヌーイ形の微分方程式と呼ばれるもので、こっちの方が解くのはずっと楽。


そして、運良く、(2)の特殊解の1つを見つけられると、(2)のようなリッカチ形の微分方程式は(3)のようなベルヌーイ形に書き換えることができ、解くことができるんだにゃ。


 ――ベルヌーイ形になるたって、こっから変数変換をして、線形の常微分方程式に書き換えなければならない。こうすることによって、初めて解ける形になる。


解くことができるというの理屈の上の話であって、これを三角関数や指数関数、対数関数を用いた初等的な関数を組み合わせて解を表せるという意味ではない。そして、これらで表せないとき、「解けない」というのであった(^^ゞ――


 


じゃぁ〜、(2)の特殊解を見つければいいじゃないかという話になるけれど、リッカチ形の微分方程式の特殊解を見つける一般的な方法なんてない。


勘と経験を頼りに、あれこれといろんな形の関数で試し、運がよければ、特殊解が見つかるかもしれない世界。まったくの運頼み。


たとえば、(2)の特殊解がxの多項式の形で表されると仮定し、その次数をnとする。すると、左辺はn−1次だね。右辺の次数は2n次だから、左辺と右辺の次数が一致するためには、n−1=2nだから、n=−1になってしまうケロ。つまり、(2)の特殊解には多項式の形のものはない。


分数関数みたいなのもダメ。


この式を見ただけで、sinxcosxのような単純な三角関数とその単純な組み合わせも駄目だし、指数関数や対数関数みたいなものがダメなのはすぐに想像がつく・・・。


すぐに、万策尽き、「こんなんじゃ、絶対にこの方程式は解けない」と、再び、絶望する。


 


2階の線形方程式に変換する方法とかあることはあるんだけれど、変換したところで、定数係数の線形方程式にはなりはしない。xの関数を係数にする2階の線形方程式になるのは必定。


 


てなわけで、某サイト(解くのコンピュータ)にお願いして、微分方程式(2)を解いてもらうことにした。


そうしたら、何ともおどろおどろしい答えが返ってきた。


  


 


ここに出てくるJというのは、第1種のベッセル関数と呼ばれる特殊関数。しかも、実関数の微分方程式なのに、虚数単位i²=−1が入っている(笑)。


愛(i)だね〜、愛。


 


それにしても、いったい、どんな形の微分方程式に変形してこの解を求めたのやら。謎だケロ。


 


微分方程式(2)は、ある変換を行うと、たぶん、次の微分方程式に変換できるはず。


  


(4)式は、エアリー方程式やストークス方程式と呼ばれるもので、この解は第一種エアリー関数と第2種エアリー関数の線型結合で表される。そして、これをxで微分して・・・。


そうすると、ベッセル関数が・・・。


たぶん。


 


こういう面倒な計算は、難しい微分方程式を解くのがお仕事の(理論系の)物理屋さんの領分だにゃ。昔からそう決まっている。だから、縄張りを犯してはいけい。


 


それはそれとして、ネムネコは物理屋さんじゃないから知らなかったけれど、どうも、(4)式はシュレ猫さんの生みの親であるシュレディンガーさんの方程式にも関係があるみたいだね。


 


この微分方程式は


  


は簡単に解けるけれど、1xに変えたらどうなるんだろう。


  


そんな素朴な疑問が出発点で、まさか、この方程式が量子力学、シュレ猫に、そして、惑星などの軌道計算まで関係するなんて、想像だにできなかった。


(2)は、超ミクロから超マクロに関係する、恐ろしく深い微分方程式だったんだね〜。


驚いたケロよ。


 


ところで、お利口なコンピュータさんは見事に微分方程式(2)を解いてくれたけれど、この解にはベッセル関数という特殊関数が入っているね〜。


そして、ベッセル関数というのは無限級数の形で表される関数で、しかも、その中にはガンマ関数という特殊関数が入っている。だから、解析的な解を求めたとしても、最終的には、コンピュータを使って近似計算をするしか手がないんだにゃ。


 


「結局、コンピュータを使わないといけないのだとしたら、最初から、オイラー法やルンゲ・クッタ法などを使って、近似計算させたらいいじゃない」


という話になると思わない?


 


厳密解の方は式の入力が大変だから代わりに2次のルンゲ・法を厳密解だと思って欲しいのだけれど、初期値をx₀=0y₀=1Euler法を使って、微分方程式(2)の数値解を計算させてみた。


 



 


お前らは、Euler法なんて精度が悪くてダメダメだというかもしれないけれど、実は、この微分方程式の場合、計算の格子間隔Δx=0.05くらいにとる、ほとんど正確に計算してしまうんだね〜。


「より高精度の4次のルンゲ・クッタ法の数値計算結果を比較参照の厳密解にすべきだ」というヒトもいるかもしれないけれど、この微分方程式の場合、2次のルンゲ・クッタ法と4次のルンゲ・クッタ法を使っても、その差は殆どない。


このことは、高精度計算が可能なカシオさんが公開してある計算サイトでも確かめてあるにゃ。


 


カシオさんの公開サイトのアドレスは次の通り。

https://goo.gl/YTC6mU


 



 


このように入力し、計算ボタンをクリックすると、計算してくれるにゃ。


そして、グラフをクリックすると、お絵かきまでしてくれる。


  


非常に便利なサイトなので、ここで、色々と数値実験をしてみるといいと思うにゃ。