第21回 ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理とコーシーの収束条件


 


定理9


有界な数列は収束する部分列をもつ。


【証明】


有界だから


  


を満たす正の実数Kが存在する。


つまり、


  


閉区間[ –K, K] を二等分して、[–K, 0] [0, K] という閉区間を作ると、 このどちらかにの無数の項がある。


かりに[0, K] にあるとして、


  


として、これをまた二等分する。すると[0,K/2] [K/2, K] になって、このどちらかにの無数の項が存在する。


かりに[K/2, K]に無数の項があるとすると、


  


として、これをまた二等分する。


こうした操作を繰り返してゆくと、


  


という閉区間の減少列が得られる。


すると、


  


になる。


区間縮小法から、これら閉区間すべてに共通に含まれる一つの数αが存在する。


次に、のなかに含まれる数列の項の中で最も番号が若いものをに含まれる数列の中で最も番号が若いものをといった具合に、この操作をと無限に繰り返す。


すると、


  


というの部分列が得られて、①と②より、α に収束する。


(証明終了)





コーシー列


次の条件を満たす数列をコーシー列という。



任意のε > 0 に対して、次の条件を満たすm ∈ N が存在する。


  


収束する数列がコーシー列である。


何故ならば、とすると、


  


だからである。


 


定理10 (コーシーの収束条件)


数列が収束するための必要十分な条件は、数列がコーシー列であることである。


【証明】


収束する数列がコーシー列になることは先に証明した。


したがって、がコーシー列であるならば、が収束することを示せばよい。


条件より


任意のε > 0 に対して、次の条件を満たすm ∈ N が存在する。


  


q=m+1 に固定し、p>m とすると


  


よって、p> m で、数列は有界。 これにm以下の項を加えても、 はやはり有界。


ボルツァノ・ワイエルシュトラスの定理より、の部分列でα に収束するものがあるのだから、任意の正の数ε に対し適当なm₁を定めると 、k>m₁


  


となkが無数に存在する。


また、条件から


  


となり、m'=max{m,m₁}とすると、k>m'


  


をみたす k が無数に存在し、そのkに対して


  


したがって、n>m'のすべてのn について


  


となり、


  


である。


(証明終了)