第9回 全微分の定義

 

一変数の微分(係数)を思い出して欲しいにゃ。微分係数の定義は

だったにゃ。

でも、これは、正確なことを言うと、微分係数の定義であって、微分の定義ではないんだケロ。

微分の定義は

となる定数Aが存在するとき、fx=aで微分可能という、

というのが微分の定義なんだケロ。

そして、これから

となり、

となるんだにゃ。

 

であるならば、これを2変数に拡張したいと考えるのが人情だにゃ。

そして、2変数関数の拡張すると

となる定数ABが存在するとき、f(a,b)で微分可能というとなるのであろう。

k=0のとき、

h=0のとき

となることがわかるにゃ。

試しに、k=0のときは

となるにゃ。

 

こういうのを微分可能、全微分可能と言うんだケロ。

そして、点(a,b)で全微分可能なとき、xに関しても、yに関して偏微分可能であることがわかるケロ。

 

そして、

になるので、

となって、全微分可能な点(a,b)fは連続になる。

 

一変数関数のとき、fが点x=aで微分可能ならば、fx=aで連続というのをやったと思うにゃ。念のために

ということで、全微分というのが一変数の微分の自然な拡張になっていることがわかると思うにゃ。

 

以上のことをまとめると、

f(x,y)が点(a,b)で全微分可能なとき、点(a,b)において連続で、

となる。

 

で、として、この定義域Dで全微分可能ならば、

みたいに書くんだケロ。

これは
  
と近似できることを表しているんだにゃ。

 

で、問題をひとつ。

 

問題 次の関数は,(0,0)で全微分可能ケロか?

【解】

(0,0)で全微分可能であれば、f(x,y)は点(0,0)で連続。

でも、(0,0)で連続でないから、全微分可能でない。

たぶん、何処かでやったと思うけれど、この関数は(0,0)で連続ではない。

たとえば、x=y=tとして、t→0とすれば、(x,y)→(0,0)になるけれど、

となり、このとき、

になる。

だから、fは点(0,0)で連続でないんだケロ。

 

さらに、

というのを何処かでやったと思うけれど、

(0,0)で偏微分可能だから、(0,0)で連続というわけでもない。

 

今、全微分の有り難みが分からなくても、そのうちにこの有り難みがよくわかるようになるケロ。