100万元の連立1次方程式を解くことなんて、まず、ないと思うだろう。
しかし、例えば、3次元の計算を行う場合、100万元の連立方程式なんてすぐに出てくるにゃ。
例えば、1辺の長さが1mの立方体のものに力を掛けて、その応力と歪を差分法を用いて数値計算で求めようとする。x、y、z軸方向にそれぞれ100分割したら、計算点は100³=100万になってしまう。したがって、1mの立方体の応力と歪を1cm間隔で計算しようとしたら、少なくとも、100万元の連立方程式を解かなければならない!!
n元1次連立方程式を解くための掃き出し法の反復計算の回数は約n³/2回だから、100万元の1次連立方程式を解くための計算の反復回数は10¹⁸/2=5×10¹⁷回、すなわち、500ペタ回。スパコン京の一秒間に計算できる量は10ペタ・フロプスだから、「京」を使っても、優に1分はかかる計算量。
――ddt³さんが現在執筆している境界要素法ならば、3次元ではなく2次元の境界面(2次元の計算ならば、境界線の1次元)の計算でよいので、計算する点を大きく減らすことができる!! 境界要素法の最大の利点は、この計算量を減らせるというところにある。そのかわり、偏微分方程式を連立方程式に置き換える数学的な操作を離散化というけれど、境界要素法の離散化は有限要素法などよりも複雑になり、計算も複雑になるが、それでも十分すぎるほどのメリットがある。――
この問題を解くためには、応力と歪の連立方程式になるので、200万元の連立1次方程式になるのかな(^^)

1mの立方体ならばこんなものだけれども、数百メートルの超高層ビルの場合、どうなるにゃ。
50m×50m×200mの超高層ビルの場合、1m間隔で分割した場合、計算点は、50×50×200=50万で、応力と歪の2つの連立方程式になるので100万元の連立1次方程式になってしまう。しかも、分解能は1mしかないにゃ。分解能を10cmにしようとしたら、5億元の連立1次方程式を解かなければならない。
10cmの分解能じゃ〜、この超高層ビルのどこでヒビが入るかわからないにゃ。せめて、1cmくらいの分解能は欲しいということになったら、・・・。世界最高速のコンピュータを使っても、膨大な計算時間が必要になってしまう(^^)

ちなみに、気象庁が行っている最も高精度の数値天気予報の分解能は10km!! ゲリラ豪雨の予想は、この分解能ではおそらく無理。
ゲリラ豪雨の予想ができるように、この分解能をそれぞれ縦、横、高さで10倍にしたら、計算点は1000倍になり、この連立方程式を掃き出し法で解こうとしたら、1000³=10億倍の計算量になってしまう。
10億倍は大げさだけれども、1km四方の予報をしようとしたら、少なくとも今のスパコンより10万倍くらい速いスパコンじゃないと無理だと思うケロ。


なぜ、今よりもキメの細かい数値計算による天気予報が行えないのか、その理由がわかってもらえたんじゃないかな。今のスパコン程度の計算速度では、これを行うために必要な連立1次方程式を解くのに時間がかかりすぎるためだったんだにゃ。そして、スパコンの開発の歴史は、如何に早く連立1次方程式を解くけるようにするか、という一面があるんだにゃ。


INPACK ベンチマークは LINPACK に基づいたベンチマークプログラムで、システムの浮動小数点演算性能を評価する。ジャック・ドンガラが考案したもので、理学・工学で一般的な n×n の線型方程式系 Ax = b を解く速度を測定する。このベンチマークの最新版はTOP500で世界の高速なコンピュータの性能値としてランキングに使用されている。
https://goo.gl/Lm2JJ8